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2022年改正 育児・介護休業法 産後パパ育休の創設で関心の高まる育休中の就業や就労

      2022/09/09

2022年10月から新たに出生時育児休業(産後パパ育休)の制度が始まります。これは男性の育児休業の取得促進を目的に導入される制度になりますが、子どもが1 歳になるまでの育児休業とは別の制度として設けられ、休業中の就業が認められる仕組みとなっています。4月改正になった点も踏まえて、注意点を確認してみましょう。

 

◇2022年4月改正

4月に施行された改正点を大きく分けると、①育児休業を取得しやすい雇用環境整備、②妊娠・出産の申し出をした従業員への個別周知・意向確認、③有期雇用労働者の育児休業・介護休業の取得要件の緩和の3 点になります。

 

◇育児休業を取得しやすい雇用環境整備

 育児休業と産後パパ育休の申し出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下のいずれかの措置を講じる必要があります。

①育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施

②育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口設置)

③自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供

④自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

※複数の措置を講じることが望ましいとされています。

 

◇妊娠・出産の申し出をした従業員への個別周知・意向確認

2022年4月以降、従業員本人から妊娠・出産等の申し出や、従業員の配偶者の妊娠・出産等について申し出があった場合、会社は育児休業制度等をはじめとする一定の事項を、従業員へ個別に周知する必要があります。

 周知すべき事項は以下の4 点になります。

①育児休業・出生時育児休業に関する制度

②育児休業・出生時育児休業の申し出先

③雇用保険の育児休業給付に関すること

④労働者が育児休業・出生時育児休業期間について負担すべき社会保険料の取扱い

 ※出生時育児休業に関することは2022年10月以降が対象です。

 

 この個別周知とともに、育児休業の取得の申し出について従業員の意向を確認することになります。なお、これらの個別周知や意向確認の方法は、面談の他、書面を渡すことや、従業員が希望したときにはFAX や電子メール等を用いることも可能です。

◇意向をどこまで確認するか

 意向確認の具体的な内容について、厚生労働省が作成した意向確認書の様式例を見ると、以下の4つの選択肢のうちから、従業員が該当するものに「〇」をつけ、会社に提出する方法になっています。

・育児休業を取得する

・出生時育児休業を取得する

・取得する意向はない

・検討中

 

この意向確認について、会社がどこまで確認する必要があるか迷いますが、指針・通達では、意向確認の働きかけを行えばよいとされており、具体的な意向を把握することまでを求めるものではないとしています。当然、意向を把握することが望ましいとはいえますが、従業員によっては回答をしないケースも出てくることも想定されます。今後の具体的な管理・運用方法の検討を事前に行っておきましょう。

 

◇有期雇用労働者の育児休業・介護休業の取得要件の緩和

 現行要件と、2022年4月1日以降の改正ポイントを確認しましょう。

 

【育児休業の場合 現行】

(1)引き続き雇用された期間が1年以上

(2)1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない

 

【2022年4月1日以降】

(1)の要件を撤廃し、(2)のみに

※無期雇用労働者と同様の取り扱いです。

(引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は労使協定の締結により除外可)

※育児休業給付についても同様に緩和されています。

 

 

◇2022年10月改正 産後パパ育休制度 育児休業中の就業の原則

 「育児休業」とは、従業員が一定の子どもを養育するために取得する休業になります。「休業」とは、雇用契約関係は継続したまま、従業員の労務提供の義務が一時的に消滅することを指しています。そのため、そもそも育児休業中に労務を提供することは想定されないものであり、労務提供を行った場合は、本来は育児休業が終了することになります。

 これを前提としつつ、会社と従業員の話し合いにより、育児休業中の従業員が子どもの養育をする必要がない期間について、一時的・ 臨時的に就労すること(以下、一時的・ 臨時的就労)は妨げないと示されています。そのため、育児休業中であっても、一時的・臨時的就労が認められるように変更となりました。

 

◇産後パパ育休中の就業

 産後パパ育休も「育児休業」であることに変わりはありませんが、法令により、労使協定を締結することや規定に沿った内容にすることで、あらかじめ定められた日に就業させることができる仕組みとなり、柔軟な対応ができる形となりました。

 そのため一時的 ・臨時的就労とは違い、産後パパ育休中は、恒常的・定期的な就業であっても認められることで、より使いやすい制度になったのではないでしょうか。

 

◇育児休業中の他社での就労

 働き方改革の一環として、副業・ 兼業に対する意識が変わりつつある中、育児休業中に他の会社で働くようなケースも想定されています。

 育児休業中に他の会社で就労することについては、子どもを養育するために取得する休業であるという育児休業の趣旨にそぐわないとされており、届出等を行わずに就労している場合等は、一般的に信義則に反するものであり、会社に対する背信行為と言えるのではないでしょうか。

 男性の育児休業の取得が促進されるにつれ、夫婦で育児をすることも増え、育児から手が離れ、副業を考える従業員が出てくるかもしれません。育児休業中に他の会社で勤務することを認めるのか、育児休業取得前に説明しておくことが必要になるかと思われます。

 

 今後、男性従業員からの問合せが増えることが予想されます、人事・総務の担当者については、今一度、制度の確認を行いましょう。

 

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