脳・心疾患による労災認定判例④~足立労基署長(タクシー運転手)急性心筋梗塞死事件~
2024/08/02
社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
今週は「脳・心疾患による労災認定判例」の最終回になります!
ここまで全3回、労災として認定された判例を紹介してきましたが、今回は認定されず不支給となった判例です。
今回の判例は勤務時間中の発症であったため、すぐに、労災だ!と考えがちですが、「脳・心疾患」の場合の判断基準は、今まで紹介してきた通り、一般的な労災とは少し違います。
これらを踏まえて、それではいってみましょう!
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【目次】
◆足立労基署長(タクシー運転手)急性心筋梗塞死事件 概要(H10・04・23東京地裁)
◆判旨
◆まとめ
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◆足立労基署長(タクシー運転手)急性心筋梗塞死事件 概要(H10・04・23東京地裁)
タクシー乗務員として勤務するAは、出番→明番→出番→明番→公休の5日間を周期とし、乗務員の所定拘束時間は、午前6時30分出勤、7時出庫、翌日午前1時帰庫、1時30分終業の19時間(うち休憩3時間)とされていた。
Aは、発症当日、2回乗客を乗せて運転したが、その間胸痛があり何度か嘔吐したため、病院に駆けつけて受診したところ、急性心筋梗塞と診断、同病院はAをCCU(虚血性心疾患の集中治療施設)のある病院に搬送するため救急車に乗せたところ心停止となったため、近くの救急センターに搬送し、心肺蘇生術が施されたが、同日急性心筋梗塞によるAの死亡が確認された。
Aの妻であるXは、Aの死亡は業務に起因するものであるとして、Y(足立労働基準監督署)に対し、労災保険法に基づき、遺族補償及び葬祭料の支給を請求したが、Yはこれを不支給処分。
Xは本件処分を不服として、審査請求、更には再審査請求をしたが、いずれも棄却の裁決を受けたため、本件処分の取消しを求めて本訴を提起した。
◆判旨
〇発症前3ヶ月間、Aの勤務の状況は、1乗務当たりの平均拘束時間が「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を若干超えてはいるものの、1ヶ月当たりの平均拘束時間は基準をかなり下回っており、乗務日と次の乗務日との間に相当な休息期間があるなど、肉体的、精神的に過重労働と認め得るようなものではなく、本件発症前1週間の業務内容も平常の運転業務の域を出るものではなかった。
〇Aは本件発症前2ヶ月間に3回(うち2回は本件発症前10日間)交通事故に遭ったが、いずれも相手方の車に追突された軽微な物損事故であり、会社から制裁を受けたこともなく、事故後営業成績が落ち込んだこともなかった。
〇発症当日は50時間近くの休息期間を取った後であり、その業務も2回乗客を乗せて運転しただけで特に負担となるようなものではなかったことが認められる。
〇Aは、本件発症の約4年前から高血圧症の治療を行っており、心筋梗塞発症の危険はある程度高かったと推定される。
〇また、降圧剤を受領していないなど、医師によるとAがその高血圧症について適切に治療を受けていたとは到底いえない状況であった。
〇Aの業務内容が平均的なタクシー運転手の勤務状況と比較して過重とは認められない上、「医学上、高血圧治療中で、毎日20本程度の喫煙習慣のある50歳の男性がある朝突然に心筋梗塞を発症して3時間後に急死することは、業務中であったか否か、過度の業務によるストレスの有無にかかわらず、普通に起こり得ることである。」といえる。
〇よって、Aの死亡原因となった心筋梗塞は、業務による負荷が同人の有していた血管病変等をその自然的経過を超えて急激に増悪させた結果発症したものと認めることはできない。
◆まとめ
いかがでしたでしょうか。
やはり既往症がある方や、喫煙などある程度リスクファクターを持っている方の場合は、医師の見解も必要になってくるため、注意が必要ですね。
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