お得な労務情報♪

「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)」「労働時間とは」

   

この是正結果の公表は、平成14年度から毎年度行われているものです。

今回公表されたのは、労働基準監督署が監督指導を行った結果、令和3年度に、不払となっていた割増賃金が支払われたもののうち、支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたものになります。

<令和3年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果のポイント>

  • 是正企業数→1,069企業(前年度比7企業の増)

 そのうち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、115企業(同3企業の増)

  • 対象労働者数→6万4,968人(同427人の減)
  • 支払われた割増賃金合計額→65億781万円(同4億7,833万円の減)
  • 支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり609万円(同49万円の減)、労働者1人当たり10万円(同1万円の減)

 

監督指導を受けて支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり609万円ということですが、簡単に支払える金額ではありません。中小企業で609万円の支払いとなると場合によっては、会社が傾くケースもあります。それだけ労働時間の管理はとても大切な事といえます。

 

では、割増賃金として計上される残業時間や労働時間とは、どの時間を指すのか、基本を確認していきましょう。

 

労働基準法32条では、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない」「②使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない」と規定しています。

 

原則1日8時間、週40時間を超えた時間を法定外残業ともいい、法定労働時間を超過した労働には、労働基準法上、25%以上の割増賃金の支払いが必要です。

 

また、1日8時間、週40時間を超えて労働させる場合は、36(サブロク)協定を所轄労働基準監督書に届出をする必要があります。

 

36協定は、「事業場」単位で行う必要があります。「事業場」とは、主として場所的観念によって判断され、同じ場所にあるものは原則として1つの事業場として判断し、場所的に分かれているものは原則として別の事業場として取り扱うことになります。

多店舗展開をしている企業については、本社だけ36協定を出せばいいというわけではなく、全ての店舗ごとに36協定を締結し、労働基準監督署に届出する必要があります。

 

この「労働時間」について少々踏み込んでいきましょう。労働時間とは、客観的にみて、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否かにより決まる。とされています。就業規則や労働協約、労働契約等で、特定の行為(実作業のための準備行為など)を労働時間に含めないと定めても、これらの規定には左右されず、労働基準法上の労働時間は、就業規則に定められた所定労働時間とは必ずしも一致しないこととされています。

 

例えば、一見、労働時間に見えなくとも、労働時間として認定される「手待時間」というものがあります。手待時間とは、たとえ作業をしていなくても、使用者から指示があったときに、すぐに作業に取り掛かれる状態で待機している時間のことをいいます。このような状態にある時間は使用者の指揮命令下にあるといえるため、「手待時間」は「休憩時間(労働基準法34条)」ではなく、原則として、「労働時間」として扱われます。

 

店番の待機時間において、お客様がいない時などを見計らって適宜“休憩”しても良いとする雇用条件で働く場合、“休憩”中も、来客があったときにはすぐに業務に戻らねばならないことから、この“休憩”は「手待時間」であり、労働基準法上の「休憩時間」にはあたらないと判断した裁判例があります(大阪地方裁判所 昭和56年3月24日判決、すし処「杉」事件)

 

タクシー運転手の客待ち時間についても、タクシー運転手には、お客様を送迎している時間のほか、客待ち時間が生じます。この時間も、基本的には「手待時間」として「労働時間」にカウントされます。

また、労働協約上に客待ちの場所等を制限する規定があっても、それに違反して客待ちをした時間が労働基準法上の「労働時間」にあたるかどうかは実態に即して判断すべきとした裁判例があります(大分地方裁判所 平成23年11月30日判決、中央タクシー割増賃金請求事件)

この裁判例では、指定場所以外での客待ちが約定にて制限されていましたが、そのほか営業上非効率と思われる閑散地での待機時間や、駅待ちで長蛇の列に並んでいる時間も、実態として使用者の指揮命令下にあると判断され、「労働時間」に該当するとされました。

 

労働時間として認定されるか否か、ケース毎に異なります。同じ事例のように見えて、A社では労働時間、B社では労働時間と認定されなかった。ということは起こりえますので、自社の勤務体系が心配な使用者の皆様、是非Aimパートナーズまでご相談ください。

 - 社会保険労務士 北海道, 社会保険労務士 札幌 , , , ,