【判例で見る】雇止めとは?①
2023/04/12
皆様の会社でも、「有期契約での労働者」の方はいらっしゃるのではないでしょうか。
アルバイト・パートの方や契約社員と呼ばれる方など、契約期間が設けられている労働者の方は多く存在します。
会社としては、契約期間を設けたからといって自由に契約を終了してよいのでしょうか。
今回は使用者側が知っておきたい有期契約労働者の契約期間のルールをご紹介していきます。
「雇止め」とは?
雇止めとは、有期労働契約者に対し、企業が労働契約の更新を拒否し、契約期間満了として雇用が終了することを指します。
2012年に公布された、労働契約法改正により有期労働契約者の契約期間については以下のルールが改正されました。
(1)無期労働契約への転換
(2)「雇止め法理」の法定化
以上について詳しく解説していきます。
- 無期労働契約への転換
有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールです。「無期転換ルール」とも呼ばれています。
従業員側がこの転換を申し出た場合、会社側がそれを拒むことはできません。同じ会社で5年を超す更新をしていれば、パート・アルバイト等問わず有期契約労働者全員が対象となりますが、契約が無期になるというだけで、他の労働条件についても転換される(正社員になれる)というわけではないため注意が必要です。
また、従業員が転換を申し出る期間にも決まりがあります。申出期間については以下のリーフレットをご覧ください。
「厚生労働省 労働契約法改正のポイント」https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/h240829-01.pdf
(2)「雇止め法理」の法定化
こちらは、最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内容で法律に規定されました。
「雇止め法理」とは雇止めに対し、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は雇止めを認めないとするルールです。
難しい言い方にはなっていますが、逆にいうと、客観的に合理的な理由があるのであれば問題なく雇止めすることは可能です。
「客観的に合理的な理由」の例としては、、
・臨時性のある職務で有期労働契約を締結したこと
そもそもその有期労働契約が過去に反復更新されたことがなかったり、労働者においてその有期労働契約が更新されるものと期待させることもなかった場合には雇止めとしても問題ありません。
・通常の解雇同様の合理的な理由があること
有期労働契約であっても、正社員の解雇が認められるほどの合理的な理由(素行不良・能力不足・激しい経営不振等)があるのであれば、雇止めが認められます。
ではどのような場合雇止め法理が適用されてしまうのでしょうか。
雇止め法理が適用されるには、対象者として以下の条件があります。
・無期労働契約と同視できると判断できる労働者
反復継続的に更新がされていたかどうかや、雇用の通算期間、正社員と同様の業務か否かなど、実質無期契約と同等と判断された労働者の場合です。
・更新されるものと期待する合理的な理由を持っている労働者
客観的に見て、労働者が「その契約更新が当然されるもの」と、期待できる合理的な理由があるときは雇止め法理に違反することになります。使用者から労働者に対して契約を更新する旨を感じさせる発言があったり、他に契約期間満了をもって契約を終了させた事例がない場合などがこれにあたります。
上記の条件にあてはまり、先ほど挙げた客観的に合理的な理由にも該当しない場合は「雇止め法理」が適用になる可能性が高いです。
有期契約者に対する労務管理、、、どうすればよい?
では実際にどのように労務管理していけばよいのでしょうか。
会社としては、「有期契約労働者として様子を見たい」「会社の経営状況がどうなるかわからないから有期で雇いたい」という気持ちが本音かと思います。
使用者として有期雇用労働者を雇う場合、以下のポイントを気を付けるとよいでしょう。
・雇用期間の管理を徹底する
期限管理ができておらず、期限満了後も黙示で契約が更新されていることが常態化すれば、雇止めのハードルが高くなる可能性は高くなってしまいます。
しっかりと管理し、期間満了日の1ヶ月以上前には、契約満了の通知を出すよう徹底しておきましょう。
また、次回は更新しないのであれば、契約書にその旨を明記しておくと、次の期間満了時に雇止めが行いやすくなります。
・業務内容の限定を検討する
有期労働契約で従業員を雇用する際は、業務内容をできる限り特定し、これを契約書に定めておきましょう。業務内容を限定することで、この業務がなくなった時点での雇止めが合理的であると判断されやすくなります。
ただし、業務内容を限定した場合には、従業員を他の業務に従事させようとした際に。契約内容に反してしまうため注意が必要です。
・契約更新回数の上限を定めておく
有期労働契約で従業員を雇用する際には、あらかじめ更新回数の上限を定め、これを契約書に記載しておくことも一つの手です。これにより、この回数を超えて更新されるとの期待を従業員に抱かせづらくなり、雇止めがしやすくなる可能性があります。
また、回数の上限を定め5年を超えて雇用しないようにすることで、無期転換ルールが適用されるリスクを避けることが可能となります。
・安易な言動を行わない
企業側は、有期労働契約となっている従業員に対して、安易な言動をしないよう注意しなければなりません。
いくら契約書などで更新回数の上限や次回は契約更新をしないことなどを定めていても、会社側が日ごろからこれを超えて更新することなどを匂わせる言動をしている場合などには、雇止めが違法であると判断される可能性があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
雇止め法理については判断が難しい部分も多く、会社での現在の運用を不安に感じさせてしまったかもしれません。
先ほどご紹介した有期雇用労働者に対する労務管理のポイントの徹底とともに、次回では、実際にこの「雇止め」についての判例をご紹介していきますので、実際の判例を学ぶことで、現在の有期契約労働者の運用を見直していきましょう。
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