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【判例で見る】労働時間の定義

      2023/04/12

 事業主の皆様は、「労働時間」とは具体的にどこからどこまでのことをいうのか、正しく理解できていますか?

 

 仕事をする上で「電話番もしている休憩時間」「現場への移動中、助手席にいる時間」「制服に着替える時間」など、労働時間かどうか判断するのがなかなか難しい場面が山ほどあるかと思います。

 

 実はこの「労働時間かどうか」を争った判例というのはとても多く存在します。

 

 今回はより身近な内容の判例をご紹介しますので、ご自身の会社では間違った運用をしていないかどうかを確認するとともに、理解を深めていきましょう。

 

                                      

 

「着替え時間」は労働時間?

                                         

 

 〇三菱重工長崎造船所事件(最高裁判所平成一二年三月九日判決)

 

 この事件では、本来の業務外の活動である作業服の着脱などの業務のための準備時間が労働時間にあたるかどうかが問題となりました。

 

 ⇒業務のための準備行為を事業所内で行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされている場合は、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるため、その準備時間は、労働時間に該当するとの判断が下されました。

 

 よって従業員の都合で着替えている場合や、通勤時に制服の着用が認められている場合などでは労働時間に該当しないケースが多いです。

                                         

 

出張中の移動時間は労働時間?

                                        

 〇横河電機事件(東京地方裁判所平成6年9月27日判決)

 

 この事件では、韓国に出張するための移動時間が労働時間にあたるかが問題となりました。

 

 ⇒移動時間は労働拘束性の程度が低く、これが実労働時間に当たると解釈するのは困難であるとしました。

 

 出張中の移動は労働者が日常の出勤に費やす時間と同一性の質であると考えられています。ですが、移動中に物品や現金の管理を指示されている場合や、上司から指示された資料を作成している場合などは、労働拘束性の要素が強くなるため、労働時間としてみなされることになります。 

 

 出張の移動時間が労働時間にあたらないとしても、休憩時間とは違って一定の拘束時間であることは否定できないことから、会社によっては移動時間を労働時間とはみなさないものの、出張手当を設けているところもあります。

                                         

 

仮眠時間は労働時間?

                                        

 

 〇大星ビル管理事件(最高裁判所平成14年2月28日判決)

 

 この事件では仮眠時間が労働時間にあたるかどうかが問題となりました。

 

 ⇒不活動時間である仮眠時間であっても、労働契約上の役務の提供が義務づけられていると評価される場合には、労働者が労働からの解放が保障されていないといえるから、労働時間に該当するとの判断を示しました。

 

 今回のように、夜勤の警備員が勤務の途中でとった仮眠時間は、仮眠中に何かトラブルが発生した場合、警備員は起床して対応しなければならない時間のため、労働時間となってしまいます。しかし対応を要求しない「休憩時間」という形をとれば労働時間とはなりません。

                                         

 

その他の「労働時間とする?しない?」

                                        

 さらに細かく、様々なパターンについてみていきましょう。

 

  • ・助手席で仮眠している時間⇒労働時間とする

 

  • ・昼休みの電話当番⇒労働時間とする

 

  • ・自由参加型の研修⇒労働時間としない

 

  • ・一般健康診断⇒労働時間としない

 

  • ・特殊健康診断⇒労働時間とする

 

  • ・始業前の朝礼⇒労働時間とする

 

  • ・休日の接待ゴルフ⇒労働時間としない

 

 正しく判断できていたでしょうか??

                                         

 

まとめ

                                        

 

 いかがでしたでしょうか?

 

 判例から見てわかるように労働時間かどうかの判断基準として、指揮命令下に置かれた時間であるかが大変重要になっているポイントと言えます。

 

 厚生労働省では、「使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」として使用者に向けた労働時間に関するガイドラインを公開していますので、ぜひご覧ください。

 

「労働時間の適正な把握 のために 使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000187488.pdf

 

 職業の数だけ、様々な仕事内容があるため、今回ご紹介した以外にも判断に困るケースはあるかと思います。労働時間について、従業員から突っ込まれて困っている、しっかりとした社労士相談したいと感じた方がいましたら、社労士が複数在籍している札幌・東京の社会保険労務士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問い合わせください。

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