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38%で違法残業あり 2021年度の監督指導状況 東京労働局

      2023/02/17

 東京労働局は、2021年度に長時間労働の疑いがある事業場に対して実施した監督指導の結果を取りまとめました。指導した3458事業場のうち、1325事業場(38.3%)で違法な時間外労働が発覚しています。同労働局監督課は、「新型コロナウイルスの影響で人員を削減したものの、コロナ禍が落ち着き始めてからは人手が足りず、労働時間の増加に影響しているようだ」と意見を述べています。

 

 違法な時間外労働があった事業場のうち、471事業場で月80時間を超える時間外労働が認められました。月100時間超えは323事業場、月150時間超えは80事業場、月200時間超えは28事業場となっています。

 

 指導を実施した事業場に対しては、労働時間の管理方法も確認し、最も多かったのが「自己申告制」で、1282事業場に上っています。「タイムカード」は1032事業場、「ICカード、IDカード」は724事業場、「PCの使用時間の記録」は303事業場でした。

 

 そのうち労働時間の把握が不適正だったのは、830事業場に上りました。指導内容としては、「自己申告制の場合に、実態調査の実施」が不適正だったケースが半数を占めています。

 

 予想通りと言いますか、やはり自己申告制での労働時間管理が多数を占めていました。現在、クラウド型の勤怠管理システムが出てきていますが、勤怠管理を曖昧なままにしておきたい、費用面からも導入を渋っているというような事情もあるかもしれません。

 

 社会保険労務士の立場から言えば、勤怠管理システムを使用して、適切に労働時間を管理することを推奨いたします。労働時間の管理が曖昧なままだと、未払賃金などのリスクが発生するからです。

 

 実は労働時間の把握義務というのは、働き方改革により2019年4月より「労働時間の客観的な把握」が義務化されました。法改正前は、労働基準法において、「使用者は、各事業場に賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない(労働基準法 第108条)」

 

「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない(労働基準法 第109条)」との規定があります。※経過措置により当分の間は3年

 

 これらの規定は、労働時間の客観的把握を義務付けるものではなく、また厚生労働省のガイドラインにも、企業には社員の労働時間の把握を求められていましたが、あくまでも割増賃金を適正に支払うことを目的としていたため、労働時間把握の基準・根拠が曖昧となっていました。

 

 そのため、企業側からの指示あるいは社員側の判断により不正に労働時間の申告がなされる問題が起きており、残業代未払いや長時間労働による精神疾患や過労死などの問題が発生したとしても、証拠が不十分なため、企業と社員間でトラブルになってしまうことも珍しくありませんでした。

 

 以上のような背景もあり、2019年4月に労働安全衛生法が改正され、下記の内容が規定されています。

 「事業者は、第66条の8第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない(労働安全衛生法 第66条の8の3)」

 

 厚生労働省が省令で定める方法というのは、「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータなどの電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録」などによる方法で、改正労働安全衛生規則第52条7の3に記されています。

 

 このようなことが法律に明記されたことにより、これまで手書きの出勤簿を利用していた、自己申告で勤怠管理をしていた、という企業は方法を改めなければならなくなりました。

 また、今回の改正により、管理監督者やみなし労働制が適用されている労働者といった、これまで「労働時間の把握が必要とされなかった労働者」に対しても、客観的な方法による労働時間の把握が必要になりました。

 

 労働時間の把握を行わないことは、それだけで労務リスクを背負うことになります。社員から訴えられた場合、企業が労働時間を把握していなかったことで、社員が主張した労働時間がそのまま認定される事態も想定されます。

 

 こうした労務リスクを避けるためにも、自社の勤怠管理にお悩みを抱えている経営者の方は、是非札幌・東京の社会保険労務士法人Aimパートナーズまでご相談ください。

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