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Twitter社の日本での大量解雇、日本では認められる?

      2023/02/17

 2022年10月27日にTwitter社の買収を完了させたイーロン・マスク氏は、10月31日にTwitter社の最高経営責任者(CEO)に就任すると同時に取締役全員を解任し、11月4日、日本法人で働く従業員も含めて、全社で従業員の約半数を解雇するという大量解雇を行いました。

 従業員約7,500人がいたということですから、その半数となると約3,750人。アメリカらしい大胆な解雇ですね。

 

 外資系企業でも、日本法人であれば日本の法律が適用されることになります。労働基準法や最低賃金法といった「強行法規」は、外資系企業でも、日本国内で事業が行われている以上、適用されます。

※強行法規とは、当事者の意思に左右されずに強制的に適用される規定。従って、強行法規に反するような契約をした場合には、その契約はその部分について無効とされる。

 

 ただし、一部の労働条件について、複数の国・地域にまたがった法律関係がある場合は、「法の適用に関する通則法(以下、通則法)」によって、法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による(通則法第7条)とされています。

つまり、労働契約の際に、当事者によってどの国・地域の法律を適用するかが選ばれている場合には、適用する法律は、当事者が選んだ地の法律となります。しかし、その場合でも日本の強行法規は適用されますので、当事者の意思にかかわらず、日本の法律が適用されるものと考えられます。

 

 実際にTwitter社の日本法人の従業員が日本・アメリカ、どちらの法律を適用しているのか不明ですので、この話はここまでとし、日本の法律が適用されるとして、今回の解雇について述べていきます。

 

 まず、解雇が認められる要件として、労働契約法第16条に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定されています。「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当」の2つの要件が必要です(解雇権濫用法理)

 

 「客観的に合理的な理由」とは、限定解釈をされた解雇事由該当性を意味し、就業規則に解雇事由があったとしても、当然に法的に有効な解雇事由とはいえません。例えば、就業規則に「勤務成績が不良のとき」と解雇事由があったとしても、日本の長期雇用システムの下では、少々の不良では解雇事由該当性は認められません。勤務成績が著しく劣り、かつ改善の見込みがないときのような、労働契約終了という大きな結果を発生させるにふさわしいものに、限定的に解されています。

 

 このように就業規則の解雇事由を限定的に解釈した規範に対して事実が該当するときに、初めて「客観的に合理的な理由」があるとされます。裁判例では、該当しない場合「解雇理由がない」とされるのです。

 

 これに対し、「社会通念上相当」とは、解雇事由該当性とは別に、解雇を基礎づける事実に対して、解雇という重い法的効果が相当であるかを問うものになります。「重きに失する」か否かが判断の中心となります。

 

 主な考慮要素として、解雇事由と解雇という効果のバランスになります。これは一般社会における基準で判断されます。この中で、当該企業の労使関係の在り方や、当該企業における同種事案での解雇実績の有無という企業論も問われます。さらに、労働者に処分歴があるか、情状として宥恕(ユウジョ:寛大な心で罪を許すこと)すべき点がないか、手続きが相当であったか、なども問われます。

 

 実際の適用に当たっては、解雇事由該当性と相当性とが区分されず、結論としての「権利濫用だから無効」が強調される傾向があります。実務上では、労働者の非違性等が乏しく、そもそも解雇事由該当性にも疑問がある事案では、「客観的に合理的な理由」が無いとされます。有効無効の判断が微妙な事案では、「相当性」が理由とされるケースが多いようです。

 

 また、Twitter社の解雇を考えるときに、交代した経営者によってなされた大量解雇では、経営上の赤字が原因で行われるケースも多いです。これは、いわゆる「整理解雇」に当たります。

 

 整理解雇については、次回のブログで述べていきたいと思います。

 

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