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常時雇用労働者の定義・カウント方法【後編】

      2023/02/13

前回の記事では、「労働基準法」「労働安全衛生法」における常時雇用労働者の考え方についてご紹介しました。この考え方は労働者の人数を基準に法令上の義務が定められているものについて考える際必要な知識であり、またその基準は、法令によって違います。

今回は「障害者雇用促進法」「次世代育成支援対策推進法」などの法令においての常時雇用労働者の考え方を見ていきましょう。

 

  • 障害者雇用●

障害者雇用促進法は、雇用分野における障害者の働く機会や待遇を確保し、職業の安定を図ることを目的とした法律です。この法律では事業主の障害者の雇用義務や障害者に対する差別の禁止などが定められています。対象となる障害者は、身体障害者や知的障害者、精神障害者、発達障害者、難治性疾患患者など、長期間にわたり職業生活に相当の制限を受ける人です。各障害者の範囲は次の通りです。

 

身体障害者:障害者雇用促進法・別表に記載されている障害のある人

知的障害者:知的障害者更生相談所等により知的障害があると判定された人

精神障害者:精神障害者保健福祉手帳を持つ人や所定の精神疾患に罹患している人

 

障害者雇用促進法において、「常時雇用する労働者数」は事業規模を判断するために使用されるとともに、障害者の法定雇用率の計算基礎として利用されます。

「常時雇用する労働者」の範囲としては、労働基準法や労働安全衛生法とは異なり、 労働時間が一定以上の人に限られます。また、短時間労働者については、労働者0.5人としてカウントするなど特殊な計算をします。

計算方法は1週間の所定労働時間に応じて、次の通りカウントします。

 

30時間以上の人:労働者1人としてカウント

20時間以上30時間未満の人:0.5人としてカウント

20時間未満の人:労働者としてカウントしない

 

パートやアルバイトについても雇用形態ではなく、1週間の所定労働時間によって「1人」「0.5人」「非該当」となります。障害者雇用促進法は事業主の障害者雇用義務等について定めた法律であるため、派遣社員については雇用主である派遣元で労働者として計算します。

また1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者であっても1年を超えて雇用される人(見込みを含む)が対象となります。

 

 

 

障害者雇用促進法で「常時雇用する労働者」について定められた条文は次の通りです。

 

第43条:一般事業主の雇用義務等

雇用する対象障害者である労働者の数が、常時雇用する労働者の数に障害者雇用率(※)を 乗じて得た数以上であるようにしなければならない。

※いわゆる「法定雇用率」のこと。2021年3月1日から民間企業は2.3%

つまり、現在、常時雇用する労働者が43.5人以上の事業主(企業)は、障害者を1人以上雇用が義務。

 

附則第4条:納付金及び報奨金等に関する暫定措置

雇用する労働者の数が常時100人以下である事業主は、当分の間、第49条第1項第1号、第50条の規定は適用しない。

 

第49条第1項第1号の規定は「納付金」、第50条の規定は「障害者雇用調整金」のことです。常用雇用労働者数が100人を超える事業主を対象に、障害者雇用が法定雇用率を下回る事業所から国が納付金を徴収し、法定雇用率を上回る事業所に対して障害者雇用調整金が支給されます。

 

また、常時雇用する労働者が43.5人以上の事業主は、毎年6月1日現在の「障害者雇用状況報告」が義務付けられています。この値は法定雇用率が変わると変更されます。

 

  • 次世代育成支援対策推進法等●

次世代育成支援対策推進法は、急速な少子化が進行している中、次の社会を担う子どもたちが健やかに生まれ、安心安全な環境で育っていけるよう、国を挙げて環境整備に努めるために2005年に施行され、10年間を集中的・計画的取組期間とした時限立法です。

次世代育成支援対策推進法では、常時雇用する労働者が101人以上の事業主(企業)に対して、一般事業主行動計画の策定・届出を義務付けています。

また、働きたい女性が個性と能力を十分に発揮できる社会の実現を目的としている女性活躍推進法についても同基準で事業主に「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・届出」および「女性活躍推進に関する情報公表」を義務付けています。

これらの法令の常時雇用する労働者には、正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトなど、雇用形態は問いません。期間の定めなく雇用される人、過去1年間に引き続き雇用されている人または雇入れ時から1年以上雇用されると見込まれる人全てが「常時雇用労働者」として含まれます。

 

いかがでしたでしょうか?

人事担当者は、それぞれの法令での「常時雇用労働者に基準」について理解し、従業員が増えるたびに意識しなければいけません。もし、これらについて管理に不安がある方や、社会保険に関すること、被扶養者の要件、手続きの方法、傷病手当金、出産手当金及び障害年金等でお困りの方は社労士が複数在籍している札幌・東京の社会保険労務士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問い合わせください。

 

 

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