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常時雇用労働者の定義・カウント方法

      2023/02/13

新年あけましておめでとうございます。

昨年は格別の御厚情を賜り、厚く御礼を申し上げます。

何とぞ昨年同様のご愛顧を賜わりますよう、本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

さて、昨年最後の記事では、2023年法改正のおさらいをしました。

その中で、「育児休業取得状況の公表 義務化の公表対象は常時雇用する労働者が1,000人を超える事業主」とご紹介しましたが、皆さんはこの場合でいう「常時雇用する労働者」について、正しく理解できていますでしょうか?

「常時雇用する労働者」についての考え方は、今回の法改正だけではなく、

・就業規則の届出については常時使用する労働者の数が10人以上の事業場

・衛生委員会の開催は常時使用する労働者の数が50人以上の事業場

など、労働者の人数を基準に法令上の義務が定められているものについて考える際、必要な知識になってきます。

全2回に分けて、常時雇用労働者の定義について解説していきますので、労務管理の基本として、しっかり理解しておきましょう。

 

今回は「労働基準法」「労働安全衛生法」における常時雇用労働者の考え方について解説します。

 

  • 労働基準法●

労働基準法は、使用者と比べて立場の弱い労働者を保護するために、労働者の最低限の労働条件を定めた法律です。労働基準法での労働者の定義は、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で賃金を支払われる者(第9条)」です。

これを踏まえ、「常時使用する」については、企業の通常の状況により判断するため、繁忙期など期間限定で働く労働者を臨時的に雇い入れた場合や、臨時的に欠員を生じた場合は労働者の数に変動が生じたものとして取り扱う必要はありません。逆にパートタイマー・アルバイトであっても臨時的な雇入れでなければ、常時使用する労働者数に含める必要があるとされています。

ただし、派遣社員については注意が必要です。労働基準法の労働者は「事業に使用される者で賃金を支払われる者」であるため、派遣社員は派遣元の会社の労働者となります。派遣先の会社では、派遣社員は除いて従業員数を計算しましょう。

 

労働基準法で「常時使用する労働者」について定められた条文は次の通りです。

 

第89条:就業規則の届け出基準

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し行政官庁に届け出なければならない。

 

第32条の5:1週間単位の非定型的変形労働時間

日常業務に著しい繁閑の差が生ずる所定の事業で、常時使用する労働者数が10人未満の場合、労使協定などの要件を満たせば1日10時間労働させられる。

 

附則・36協定の例外:時間外割増の経過措置の対象となる中小事業主の定義

常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主は50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主に100人)以下である事業主。

※中小事業主を区分する基準は、常時使用する労働者数のほかに「資本金の額」もあり。

 

また、36協定を締結する労働者の代表は「労働者の過半数で組織する労働組合」または「労働者の過半数を代表する者」とされていますが、ここでの労働者は「常時使用する労働者」を指します。

 

  • 労働安全衛生法●

労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的に制定されました。具体的には労働災害を防ぐための規制や、労働者の健康管理に関する制度などを定めています。

労働安全衛生法での労働者の定義は、「労働基準法第9条に規定する労働者」(労働安全衛生法第2条)と定められています。つまり、原則、労働基準法と同じですが、労働安全衛生法が、職場で働くすべての労働者の安全を守る法律であることから、派遣労働者を受け入れている事業場は、派遣労働者も含めて常時雇用する労働者数を算出します。

しかし、雇入時の健康診断や定期健康診断、ストレスチェックについては例外です。労働時間の短いパートやアルバイトについては、事業主に定期健康診断の実施義務はありません。対象になるのは、1週間の所定労働時間が同じ事業場の同種の業務にフルタイムで働く従業員の3/4以上のパートやアルバイトだけです。また、従業員の日頃の健康管理義務は雇い主にあるため、派遣元と契約する派遣労働者の健康診断やストレスチェックは、派遣先ではなく派遣元が実施することになります。

 

労働安全衛生法で「常時使用する労働者」について定められた条文は次の通りです。

 

第12条、規則(※1)第7条:衛生管理者の選任

事業場の規模に応じて、下表に掲げる数以上の専属の衛生管理者を選任すること。

 

常時使用する労働者数

衛生管理者数

50人以上200人以下

1人

200人超500人以下

2人

500人超1000人以下

3人(※2)

1000人超2000人以下

4人(※3)

2000人超3000人以下

5人

3000人超

6人

 

※1  労働安全衛生規則のこと。労働安全衛生法とは異なる。

※2 常時500人を超える労働者を使用し、かつ法定の有害業務に常時30人以上の労働者を従事させている事業場では、1人以上専任すること

※3  1000人超の場合は1人以上専任すること

 

第13条、規則第13条:産業医の選任基準

政令で定める規模の事業場ごとに、医師のうちから産業医を選任し労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

 

常時使用する労働者数

産業医

50人以上500人未満

1人

500人以上1000人未満

1人(※1)

1000人以上3000人以下

1人(※2)

3000人超

2人

 

※1 有害業務を扱う場合、専属産業医が必須

※2 1000人超の場合は1人以上専任すること

 

第66条、規則第43条:雇入時の健康診断

常時使用する労働者を雇い入れるときは、医師による健康診断を行わなければならない。

 

第66条、規則第44条:定期健康診断

常時使用する労働者に対し1年以内ごとに1回医師による健康診断を行わなければならない。

 

第66条の10、規則第52条の9:心理的な負担の程度を把握するための検査・ストレスチェック

常時使用する労働者に対し1年以内ごとに心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。

 

そのほか、常時使用する労働者数や業種などによって、総括安全衛生管理者や安全管理者、作業主任者の選任・専属などが定められています。

 

  • まとめ

それぞれの法律によって、常時雇用する労働者の定義が異なり、またカウントの範囲が事業場の場合と事業主(企業単位)の場合があります。それぞれ正しく労働者数が算出できているか、この機会に確認していきましょう。

次回は「障害者雇用促進法」「次世代育成支援対策推進法」においての常時雇用労働者の考え方について解説していきます。

 

いかがでしたでしょうか?

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