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雇用契約書と労働条件通知書の違いについて

      2023/02/13

 事業主の皆様は、新入社員を入社させることが決まった場合、入社時にどのような書類の提出を依頼していますか? 

 

「マイナンバー」や「履歴書」、会社によっては「入社誓約書」や「身元保証書」など、それぞれの会社で必要書類には特色があるかと思います。そのような中、どの会社でも絶対に欠かせないのが「労働条件通知書」または「雇用契約書」です。

 

 私たちが普段、労務相談を受ける中で「労働条件通知書と雇用契約書は何が違うの?」「実際、どちらを結べばよいの?」「必要なのはわかっているけれど、どのように作成すればいいの?」など、「労働条件通知書」や「雇用契約書」については多くの質問を頂きます。

 

 今回は、それぞれの書面の違いや内容を確認し、労働契約に関する正しい知識を身につけていきましょう。

 

                                         

 

  • 労働条件通知書とは…「労働条件を提示する」ために必要な書類

                                         

 

労働条件通知書とは、労働契約の期間や賃金といった労働条件に係る事項を記載した書類のことです。労働基準法第15条では、使用者が労働者を雇用する際、労働者に対して労働条件を明示することを義務づけています。

特に「絶対的明示事項(後述)」と呼ばれる事項は書面で通知することと定められているため、雇用主が労働者を雇い入れる際は、必ず労働条件通知書を作成・交付する必要があります。

 

労働条件の明示は「パートタイム労働法」や「労働者派遣法」にも定められており、たとえアルバイト・パート・派遣社員といった場合でも、必ず労働条件通知書を作成するようにしなければなりません。

 

 

                                         

 

  • 雇用契約書とは…「労働条件への合意を確認する」ための書類

                                         

 

 それに対して、雇用契約書とは、雇用主と労働者が労働条件について互いに合意したことを証明するための書類です。内容は労働条件通知書とほぼ同じで、労働契約の期間や就業場所、賃金などに関する事項が記載されています。

 

 しかし、労働条件通知書が雇用主から労働者へ「一方的に交付されるもの」であるのに対し、雇用契約書は「双方が合意していることを証明するもの」です。

 

 そのため、雇用契約書は事前に2部作成しておき、従業員に署名・捺印してもらった後、それぞれが保管しておくことになります。

                                         

 

  • 「労働条件通知書」と「雇用契約書」どちらがよいのか?

                                         

 

 以上のように、労働条件通知書と雇用契約書は「双方の合意が必要であるか」という点で異なっています。

 

 また、労働条件通知書は法律で作成・交付が義務づけられていますが、雇用契約書は法律上義務づけられているものではありません。端的に言うと、労働条件通知書さえ作成・交付すれば、雇用契約書は必ずしも発行しなくて良いものなのです。

 

 しかし、雇用主から一方的に交付される労働条件通知書だけでは、労働者の合意を物理的に確認することはできないため、注意が必要です。

 

 もし雇用契約書が無いと「労働条件通知書を交付された覚えがない」「当初の契約と労働条件通知書の間に食い違いがある」などと訴えられた際、雇用主側が不利になってしまうおそれがないとは言い切れません。

 

 それに対し雇用契約書は、雇用主と労働者の双方が労働条件に合意したことを示すため、トラブルの無い雇用契約を結ぶためにはたとえ法的な義務はなくても雇用契約書を作成・交付するのがベストです。

                                         

 

  • 労働条件通知書・雇用契約書の記載内容

                                         

 

 では実際、「労働条件通知書」「雇用契約書」には何を記載すればよいのでしょうか。

 

 基本的に書式・様式は決まっていませんので、各企業によってさまざまです。しかし、法律で明示することが義務づけられている労働条件の「絶対的明示事項」の記載は必須となります。

 

 なお、書面による交付は義務づけられていませんが、「相対的明示事項」も労働者に対して明示する必要があります。相対的明示事項は口頭での通知も可とされていますが、労使間でトラブルが起こるリスクを考えると、なるべく書面で通知するのが理想です。

 

 労働条件の絶対的明示事項、および相対的明示事項は以下の通りです。

 

 

絶対的明示事項

 

 

相対的明示事項

 

 

①労働契約の期間

※有期契約労働者の場合、契約期間終了後の契約更新の基準に関する内容も記載

②就業場所

③従事すべき業務の内容

④余念始業・終業の時刻

⑤所定労働時間を超える労働の有無

⑥休憩時間、休日、休暇

⑦労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項

⑧賃金の決定、計算及び支払いの方法

⑨賃金の締め切り及び支払いの時期

⑩昇給(書面による明示は不要)

⑪退職に関する事項(解雇事由を含む)

 

 

①退職手当の定めが適用される労働者の範囲

②退職手当の決定・計算・支払い方法、支払時期

③臨時に支払われる賃金、賞与、各種手当てならびに最低賃金額に関する事項

④安全及び衛生に関する事項

⑤職業訓練に関する事項

⑥災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

⑦表彰及び制裁に関する事項

⑧休職に関する事項

 

 

また、パートやアルバイトなどの短時間労働者に対しては、以上の項目に加えて、以下4つの事項の記載が義務づけられています。

 

①昇給の有無

②退職手当の有無

③賞与の有無

④短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

 

雇用形態によって「絶対的明示事項」に多少の違いがありますので、労働条件通知書を作成する際は、雇用形態別に書面を用意しておくことが大事になります。

 

                                         

 

  •  労働条件の通知が電磁的方法でも可能に(2019年4月1日~)

                                            

 

 労働条件通知書の「絶対的明示事項」は、これまで紙媒体での交付に限られていました。しかし、労働基準法施行規則の改正にともない、2019年4月1日よりFAXやメール、SNS等を使った労働条件の明示も可能になりました。

 

 ただし、紙以外の媒体で労働条件を明示するには、以下2つの条件を満たしている必要があります。

 

 ①労働者がFAXやメール、SNS等での労働条件明示を希望した場合

 ②出力して書面を作成できるもの

 

 今やパソコンやスマホ、タブレットなどを使いこなすのは当たり前の時代ですが、中には自宅にFAXがない人、インターネットを利用していない人もいらっしゃいます。このような方々には、紙以外の手段で労働条件を明示することができませんので、事前に労働条件通知書の発行方法について確認を取っておくと良いでしょう。

 

 なお、メールやSNS等で労働条件を明示する場合は、印刷やファイルの保存ができるような、添付ファイルでデータ送信するのが基本です。

 

 

 

                                        

 

 まとめ

                                        

 

 いかがでしたでしょうか?

 

 従業員を雇用する際は、労働契約期間や就業場所、賃金といった「絶対的明示事項」を記載した「労働条件通知書」を交付することが義務化されています。

 

 個人的な意見にはなりますが、実務上、決して少なくない「絶対的明示事項」を漏らさず記載していくためには、テンプレートを活用するのがおすすめです。

 

 テンプレートは、下記の厚生労働省の公式サイトで公開されていますので、ぜひご覧ください。

 (厚生労働省/主要様式ダウンロードコーナー)

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/

 

 もし、「労働条件通知書」「雇用契約書」の内容に不安がある、出来るだけ労務トラブルのリスクを防ぎたいなど、労働契約の手順についてお困りの方は社労士が複数在籍している札幌・東京の社会保険労務士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問い合わせください。

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