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企業型確定拠出年金 112万人分 退職後も放置

      2023/02/17

 

 国民年金基金連合会は令和4年11月1日、企業型確定拠出年金(企業型DC)について、転職等で会社を離れた約112万人分の年金資金、総額約2,600億円が運用されず放置されていることを明らかにしました。企業型の確定拠出年金は、厚生年金などの公的年金に上乗せする形で加入する仕組みで、厚生労働省によりますと、令和3年3月末時点でおよそ750万人が加入しています。

 転職などで会社を辞めた場合は、6か月以内に「iDeCo」などの「個人型」の確定拠出年金に移す手続きを取らなければ、資産は国民年金基金連合会に自動的に移され、その後は運用されません。

 企業型確定拠出年金を導入している会社では、入社時に説明を行いますが、労働者が制度を理解出来ずにそのまま放置され、また、中小企業においては、入社時に確定拠出年金のことを書かれた紙だけ渡されるケースもあるようですので、労働者が確定拠出年金はどういったものなのか、全く理解できずにいる現状が、今回の放置に繋がっていると推測できます。

 

 社会保険労務士の立場から見ると、年金制度は改正を繰り返し、複雑な制度となっています。一般の方が理解できるかとどうか言えば、非常に難しいと言えるでしょう。

 社会保険労務士の試験科目には国民年金、厚生年金保険の科目があり、受験生当時、年金科目に泣かされた記憶が蘇って来ます。

 では、そもそも確定拠出年金とは、どのような年金制度なのでしょうか。

 

 確定拠出年金(DC)とは、加入者ごとに拠出された掛金を加入者自らが運用し、その運用結果に基づいて給付額が決定される年金制度です。掛金額(=拠出額)が決められている(=Defined Contribution)ことから、確定拠出年金(DC)と呼ばれています。また、「掛金建て年金」とも言われます。

 

確定拠出年金の特徴として、次の点が挙げられます。

・拠出された掛金を加入者自身が運用する。

・運用の結果に応じて給付額が決定される。

・年金資産が個人ごとに区分されていて、いつでも残高を確認できる。

・確定拠出年金制度の間で年金資産の持ち運び(ポータビリティ)ができる。

・掛金拠出時、運用時及び給付時において税制優遇がある(注)

 

(注)掛金拠出時においては、事業主掛金は損金算入が可能で、加入者掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象となります。運用時には運用益が非課税とされ、受給時(老齢給付金)においては、年金は公的年金等控除、一時金は退職所得控除の対象となります。

 

 確定拠出年金は、企業年金の一つで事業主が掛金を拠出する「企業型年金(企業型DC)」と、個人で加入して本人が掛金を拠出する「個人型年金(iDeCo)」の2つのタイプがあります。

 

 確定拠出年金は、企業年金制度改革の中で、国民の高齢期における所得の確保のための自主的な努力を支援する目的で平成13年に法制度化され、企業型DCが同年10月から、iDeCoが平成14年1月から開始されました。

 iDeCoは、従来は自営業者等(国民年金の第1号被保険者)及び65歳未満で企業年金に加入していない厚生年金被保険者が加入対象でしたが、平成29年1月から、専業主婦(主夫)などの国民年金第3号被保険者や企業年金に加入している者(企業型年金加入者については規約に定めた場合に限る)、公務員等共済加入者も加入できることとなりました。

 

 企業型DCとiDeCoの違いとして、企業型DCは事業主が主体となり実施される制度で、その事業主が使用する従業員が加入者となります。掛金は事業主が拠出するほか、規約に定めることで事業主の掛金に上乗せして、加入者が一定の条件で掛金を拠出するしくみ(マッチング拠出)を設けることができます。

 ※企業型、令和4年5月より、65歳→70歳未満まで加入可能。

 

 一方、iDeCoは国民年金基金連合会が実施する制度で、原則として20歳以上65歳未満の全ての方が加入できます。掛金は加入者自らが拠出します。

※個人型、令和4年5月より、60歳→65歳まで加入可能。

 

 iDeCoの加入者は、従来は国民年金の第1号被保険者及び企業年金のない厚生年金被保険者に限られていましたが、平成29年1月から、専業主婦(主夫)などの国民年金の第3号被保険者や企業年金に加入している者、公務員等共済加入者も新たに加入対象となり、企業型DCとiDeCoに同時加入することも認められるようになりました。

 

 運用商品については、企業型DCでは事業主が契約する運営管理機関が選定し提示したラインアップの中から加入者が選択します。一方、iDeCoでは商品ラインアップの異なる多数の運営管理機関の中から、加入しようとする者が運用商品を含めたサービス内容を比較して運営管理機関を選ぶことになります。

 

 また、令和4年10月から企業型DCに加入している方がiDeCoに加入するには、各企業の労使の合意が必要だったのですが、原則加入できるように改正されています。

 

 以上のように、法改正が何度も行われ、複雑化していくのが年金制度です。労働者(加入者)の理解が追い付かず、放置されてしまうのも頷けます。

 

 確定拠出年金について、詳しく話を聞きたい方がいらっしゃいましたら、是非札幌・東京の社会保険労務士法人Aimパートナーズまでご相談ください。

 

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