【判例から見る】休職期間満了後に解雇はできる?~独立行政法人N事件~
社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
休職制度は、病気やケガで働けなくなった労働者に一定の期間、雇用を維持するための制度ですが、休職期間が満了したとき、会社は労働者を解雇できるのでしょうか?今回は休職期間満了後の解雇で起きた判例ついて解説します!
【目次】
◆独立行政法人N事件(東京地判平16・3・26)概要
◆判旨
◆まとめ
◆独立行政法人N事件(東京地判平16・3・26)概要
ある職員(原告)は、会社(被告)に採用された後、試用期間終了後の1年半で合計112日もの病気休暇を取得していました。業務内容としては、金融・財務関連の知識が求められる職場でしたが、原告が実際に担当していたのは「書類のコピー・製本・書類の受渡し」などの比較的単純な作業でした。
その後、体調不良が続き、会社は原告に休職を命じました。しかし、原告は休職期間中にリハビリを行い、主治医から「業務内容を考慮すれば通常勤務が可能」という診断書を取得。復職を希望しましたが、会社側は「無条件で通常勤務ができるとは言えない」として復職を認めず、そのまま休職期間満了を理由に解雇しました。
原告は「休職事由は解消されていたのに解雇されたのは不当だ」として、解雇無効を訴えました。
◆判旨
〇休職制度は、労働者の回復を待つための制度ではなく、解雇を猶予するための制度であるとしました。つまり、休職制度は「いつか回復するかもしれないから、とりあえず待つ」ものではなく、「一定の期間内に回復しなければ、雇用継続が難しい」という前提で設けられているということです。
〇労働者は、休職前にコピーや製本、簡単な集計作業などの単純作業を担当していました。しかし、裁判所は、復職の可否を判断する際の基準は「その人が実際に担当していた業務」ではなく、「本来の職務」だと判断しました。
つまり、「以前は軽作業をやっていたから、復職後も軽作業ができればいい」という考え方は通用せず、会社の職員として求められる業務を遂行できるかどうかで判断されるということです。
〇労働者側は、「復職可能」との診断書を提出していました。しかし、その内容を詳しく見ると、担当業務は単純作業に限定、業務量は従来の半分程度、この状態を半年間継続する必要があるといった条件付きのものでした。
これに対し、裁判所は、半年間も業務制限が必要なのは長すぎる、仕事量を半分に減らすのは実質的な休職延長ではないか、半年後に通常業務をこなせる保障もない
と指摘し、この診断書では「復職可能」とは言えないと判断しました。
最終的に、裁判所は「会社が休職期間満了を理由に労働者を解雇したことは、解雇権の濫用ではない」と判断しました。
つまり、
・休職制度はあくまで「解雇の猶予措置」であり、無条件に復職を認めるものではない
・復職の判断基準は「その人が実際にやっていた業務」ではなく「会社の職員として求められる本来の業務」
・主治医の診断内容では、通常の職務を遂行できるとは言えない
といった理由から、解雇は適法との結論に至りました。
◆まとめ
この判決は、休職期間満了後の復職条件が厳しいことを示した事例です。
休職からの復職を希望する場合は、単に「軽作業ならできる」「業務量を減らせば大丈夫」では不十分であり、会社が求める本来の職務を問題なくこなせる状態であることが重要になります。従業員の方が「復職できるのか、期間満了で解雇なのか」の判断でお悩みになった際は、お気軽に社会保険労務士法人Aimパートナーズまでお問合せください!
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