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精神疾患での労災は認められる?

      2023/07/07

 

 

 前回の記事では労災として認められにくい傷病の一つとして「腰痛」をご紹介しました。

 

 今回はうつ病、統合失調症、双極性障害などのいわゆる「精神疾患」と呼ばれるものについてです。

 

 もし仕事上の出来事が原因で精神疾患を患ってしまったとしても、既往症との兼ね合いや私生活での過ごし方なども密接に関係しているため、労災として認定されるのが難しいことが予想されますよね。

 

 実際に厚生労働省が発表した「令和3年度過労死等の労災補償状況」では、令和3年度の精神障害での労災認定率は32.2%となっており、精神障害による労災認定の厳しい状況が伺えます。

 

(厚生労働省/令和3年度「過労死等の労災補償状況」)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26394.html

 

 しかし現状として、近年精神疾患の罹患者は増え続けており、従業員から実際に相談をうけたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

 今回は精神疾患が労災として認められる要件をご紹介しますので、実際に従業員が精神疾患を訴えてきた際、労災認定の見込みがあるかどうかの判断等、スムーズな対応できるようにしておきましょう。

 

                                                              

 

精神障害の労災認定要件

                                                             

 

 厚生労働省では、腰痛と同様、精神障害においても業務上のものとして労災認定できるかどうかを判断するための認定要件を定めています。

 

  • ① 認定基準の対象となる精神障害を発病していること

 

 認定基準の対象となる精神障害かどうかについては、主治医の診断書や診療内容、関係者への聴き取り内容などから、世界保健機関(WHO)が作成した『国際疾病第10回修正版(ICD‐10)第5章「精神および行動の障害」』に記載されている、精神障害の分類に該当しているどうかになります。

 

 うつ病・統合失調症・急性ストレス障害など、職場で起きやすい精神疾患は、当然上記に含まれますが、認知症やお酒などのアルコール、薬物に関する障害については対象となりません。

 

  • ② 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

 

 精神障害が発症するおおよそ6か月前から発症するまでの間、業務上精神的な苦痛や負担の事実関係が確認できることも認定要件の一つです。

 

 精神的な苦痛や負担については、内容により「強」「中」「弱」の三段階に分けて評価を行っており、「強」と評価された場合、「業務による強い心理的負荷」があったと認められ、認定される可能性も高くなります。

 

 具体例としては、次のような事実が発病する直前6か月の間に起こっていた場合、「強」に分類され、労災認定の対象になると考えられます。

 

  • ・会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをし、事後対応にも当たった
  • ・生死にかかわる業務上のケガや病気を負った
  • ・上司や同僚から暴言・暴行を頻繁に受けていた

 

 また長時間労働については、目安として発病直前の1か月におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の時間外労働を行った場合では「極度の長時間労働」と判断され,「強」の評価となり、業務による強い心理的負荷があったと認められます。

 

 その他、業務中の様々な出来事が心理的負荷になり得るかと思いますが、以下の表にて多くの具体例が紹介され、また「強」「中」「弱」に分類されているので、ぜひご確認下さい。

 

(厚生労働省/精神障害の労災認定)

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120427.pdf

  •  
  • ③ 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

 

 業務以外または個体要因による発病にあたらないと判断されることも必要です。

 

 逆に言えば、もし業務外でのストレス要因や個体要因が発生していた場合、仕事が原因による発症と判断することが難しくなり、慎重な判断を受けることになります。

 

〈業務外での心理的負荷の具体例〉

・配偶者と不和が続き、別居または離婚した

・親族間で相続問題が発生し、揉めている

・水害や地震などの天災に見舞われた

・借金問題を抱え、つねに返済で苦しんでいた

 

〈個体要因による発病の具体例〉

・アルコール依存症や薬物依存がないか

・過去の精神疾患の既往歴

・発達障害の有無

 

                                                              

 

まとめ

                                                             

 

 いかがでしたでしょうか?

 

精神疾患による労災認定の要件ついて、それぞれ解説してきましたが、認定されるには客観的な事実や証拠があることや、会社が全面的に協力しなければならないことなど、認定に向けてのハードルが高いことは否定できません。

 

 もし実際に今、「従業員が精神疾患になり労災を訴えてきて困っている」「うつ病になり休職したものの復帰の見込みがない」など、従業員様の精神疾患についてお悩みをお持ちの方は、社労士が複数在籍している札幌・東京の社会保険労務士法人Aimパートナーズまで、ぜひお気軽にご相談下さい。

 

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