脳・心疾患による労災認定判例②~四戸電気工事店事件~
2024/07/29
社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
今回ご紹介する判例は以下の脳・心疾患に関する労災認定基準のなかでも「異常な出来事」に該当するとされた事件です。
《脳・心疾患に関する労災認定基準》
〇長期間の過重業務
〇短期間の過重業務
〇異常な出来事
異常な出来事は、以下3つに区分されます。
- 精神的負荷
→極度の緊張、興奮、恐怖、驚がく等の強度の精神的負荷を引き起こす突発的又は予測困難な異常な事態
- 身体的負荷
→緊急に強度の身体的負荷を強いられる突発的又は予測困難な異常な事態
- 作業環境の変化
→急激で著しい作業環境の変化
では、どういった出来事が異常な出来事に当たるのか、実際の判例を見ていきましょう!
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【目次】
◆四戸電気工事店事件(最高裁平成9年4月25日判決)概要
◆判旨
◆まとめ
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◆四戸電気工事店事件(最高裁平成9年4月25日判決)概要
A社で働くXは、同僚が作業をしていたクレーンのワイヤーが切断され、金車及びこれと一体をなすフック、つり荷である電柱等が、地上約3メートルの高さから落下し、鼻の左下端と口唇部左側上下2箇所に軽傷を負った。
Xは、事故後、頭痛、食欲不振等の自覚症状があったものの、通常どおりに作業に従事していたところ、その2日後、脳血管疾患(脳内出血又はくも膜下出血)によってもたらされた気道閉塞により死亡。
そのため、Xの妻は、Y(労働基準監督署長)に対し、Xの死亡は業務に起因するものとして、労災保険法に基づく遺族保証金及び葬祭料の請求。しかし、Yは、Xの死亡は業務上の災害ではないとして、給付をしない旨の処分をしたため、処分の取り消しを求めて告訴した。
◆判旨
〇Xは、非外傷性の脳血管疾患を発症しているのであるから、その発症の基礎となり得る素因又は疾患を有していたことは否定し難い。
〇しかし、A社は定期健康診断を実施していなかったことから、その程度や進行状況を明らかにする客観的資料がなかったことや、死亡当時39歳と比較的若年であり、周囲の者からは健康状態に格別異常はないとみられていたというのであるから、同人の家族歴を考慮しても、基礎疾患等が確たる発症因子がなくても、その自然の経過により血管が破綻する寸前にまで進行していたとみることは困難。
〇Xが死亡の2日前に遭遇した本件事故は、相当に強い恐怖、驚がくをもたらす突発的で異常な事態というべきである。
〇これによる精神的負荷及び事故後に生じた頭痛や食欲不振といった身体的不調は、同人の基礎疾患等をその自然の経過を超えて急激に悪化させる要因となり得る。
〇Xは、事故後も、精神的、肉体的ストレスを受けながら、厳冬期に、地上約10メートルの電柱上での電気供給工事等の相当の緊張と体力を要する作業に従事していた。
〇よって、Xの死亡原因となった非外傷性の脳血管疾患はXの有していた基礎疾患等が業務上遭遇した本件事故及び、その後の業務の遂行によって、その自然の経過を超えて急激に悪化したことによって発症したものとみるのが相当であり、Xの死亡は、労働者災害補償保険法にいう業務上の死亡に当たる。
◆まとめ
いかがでしたでしょうか。
厚労省が紹介している「異常な出来事」は今回のケース以外にも、重大な人身事故や重大事故に直接関与した場合や、著しく暑熱な作業環境下で水分補給が阻害される状態や著しく寒冷な環境下で作業することなども具体例として挙げています。
このような出来事が発生しうる職種については、実際に従業員が脳・心疾患に罹った際、慎重な判断が必要となるでしょう。
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