家事使用人 見直しに向け実態調査実施 厚生労働省
厚生労働省は労働基準法が適用除外されている家事使用人について、実態調査に乗り出す方針を固めました。加藤勝信厚生労働大臣が令和4年10月14日の閣議後の記者会見で明かしています。調査の結果を踏まえ、必要があれば見直しを検討するとしています。
家事使用人の適用除外をめぐっては、家政婦が住み込みで7日間連続勤務した後に死亡した事案について、労災と認めない判決を東京地方裁判所が下していたこととに関連しています。
事件の概要を簡単にご紹介します。労働者は平成25年8月に、家政婦の紹介・あっせんを営む会社に家政婦兼訪問介護ヘルパーとして登録し、会社から紹介・あっせんを受けた個人宅や障害者施設で働いていました。平成27年5月20日~27日の朝までにかけては、要介護度5の女性がいる個人宅において、住み込みで介護業務と家事業務に従事し、業務終了後の5月27日の夜に心肺停止の状態で発見され、翌日死亡が確認されました。
個人宅での就労は、勤務時間が0~5時を除く1日19時間、そのうち4時間30分は介護保険を使った介護業務、残りが家事業務とされており、家事業務には、2時間おきのおむつ交換や食事の支度、買い物、家の掃除などがあったそうです。
遺族は平成29年5月、渋谷労働基準監督署長に対し、死亡は会社の業務に起因するとして、労災申請をし、同労基署長は平成30年1月16日に家事使用人は労災保険法の適用が除外されているとして、不支給処分を決定しました。遺族は審査請求、再審査請求をしたのですが、いずれも棄却となったため、不支給処分の取消しを求める裁判を起こした。というのが事件の概要となります。
労働者は、労働基準法が適用されますが、一部適用除外とされている人がいます。労働基準法第116条2項に規定があり「この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない」と定めています。
同居の親族が労働基準法を適用されない理由として、厚生労働省労働基準局より、「同居の親族のみを使用する事業については、事業主とその他の者との関係を一般の場合と同様の労働関係として取り扱うのは適当ではない」といった理由からです。
家族経営の会社であれば、自分の家族には手心を加えたくなったりしますし、やはり一般労働者との扱いには差が出てくると思います。労働基準法もそのあたりを考慮して、同居の親族を適用除外としているのでしょう。
では、家事使用人についてはどうでしょうか「家事使用人については、その労働の態様は、各事業における労働とは相当異なったものであり、各事業に使用される場合と同一の労働条件で律するのは適当ではないため、本邦の適用を除外したものである」とされています。
家事使用人・同居の親族どちらについても、通常の労働関係と異なった特徴を有するので、国家による監督・規制という法の介入が不適当であることから、労働基準法が適用除外とされています。
ただし、この家事使用人ついて、行政解釈では、家事一般に従事している者が該当するとしていますが「個人家庭における家事を事業として請け負う者に雇われて、その指揮命令下に当該家事を行う者は…該当しない」とし、企業が雇用している場合は家事使用人に当たらないとされています(昭63・3・14基発150号)
今回の事件では、死亡した方は家政婦の紹介・あっせんを営む会社に家政婦兼訪問介護ヘルパーとして登録はしていましたが、企業に雇用されているという訳ではなく、個人宅へ派遣される際は、個人事業主として個人宅と契約を行い、業務を提供していたと考えられ、企業が雇用していると判断されなかったものだと推測されます。
厚生労働省の家事使用人の実態調査の結果によって、家事使用人の取扱いがどうなるか、今後の動きに注目されます。
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