社会保険適用拡大とは?
2023/03/20
2022年から始まった社会保険の適用拡大。
「言葉は聞いたことがあっても、いまいち内容が良く分かっていない…。」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「社会保険適用拡大」とは言葉の通り、社会保険が適用となる対象が広がったことを指します。国としては、労働者全体の4分の1を占める短時間労働者に社会保障を行き渡らせるという狙いがあり、改正となりました。
さっそく、適用拡大の要件を詳しくみていきましょう。
企業規模によって、適用拡大の開始時期が異なる
実は、従業員数500人超(501人以上)規模の企業においては、すでに2016年からスタートしています。それが、2020年に成立した年金制度改正法により、その範囲を段階的に拡大し、2022年には従業員数100人超(101人以上)、2024年には50人超(51人以上)規模の企業にも拡大していくこととなりました。
すでにスタート済み
2016年10月〜 従業員数500人超(501人以上)規模
2017年4月〜 従業員数500人以下の企業(労使合意により、適用拡大が可能)
2022年10月〜 従業員数100人超(101人以上)規模
今後スタート
2024年10月〜 従業員数 50人(51人以上)超規模
従業員の要件によって、適用に該当するか判断される
従業員の要件によって、社会保険の被保険者に該当するか判断されます。
従来の社会保険の適用要件は以下になります。
【従来の従業員要件】
・正規従業員/フルタイム従業員
・週の所定労働時間数および月の所定労働日数が、正規従業員の4分の3以上であるパート・アルバイト等
適用拡大対象の企業では開始時期以降、以上の従来の要件を満たす従業員に加えて、以下の4つの要件をすべて満たす従業員(短時間労働者)についても、社会保険被保険者になります。
【新たに広がった従業員要件】
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
週の所定労働時間は、原則、契約上の労働時間が20時間以上あることで判断します。したがって、残業など臨時の労働時間は含みません。ただ、週の所定労働時間が20時間未満であっても、実労働時間が2か月連続して週20時間以上となり、引き続き20時間以上見込まれる場合には、3か月目から社会保険が適用されるなど、実態の労働時間が重視されます。
- 雇用期間が2か月超見込まれること
雇用期間が2か月超見込まれるかどうかで判断します。ただし、雇用契約期間が2か月以内であっても、実態が2か月を超えて使用される見込みがある場合は、雇用期間の始めから遡及して適用対象となります。たとえば、雇用期間が2か月以内でも、以下のような場合は、遡及して適用を受けます。
・就業規則、雇用契約書等で、「更新ありの旨」「更新される場合がある旨」が明示されている
・同じ職場で、同様の雇用契約で雇用されている従業員が、更新等で契約期間を超えて雇用された実績がある
- 賃金月額が8万円以上(年収106万円以上)であること
賃金月額が8.8万円以上であることが必要です。時間外労働手当、休日・深夜手当 、賞与や業績給、慶弔見舞金など臨時に支払われる賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などは、含まれません。
- 学生でないこと
学生は、社会保険の適用対象外となります。ただし、卒業前に就職したり、卒業後も引き続き同じ会社に雇用される場合などは適用対象となります
従業員数 カウントの方法とタイミング
段階的に従業員規模の要件が拡大されていきますが、ここで注意したいのが、従業員数のカウントの方法と、カウントのタイミングです。
- 従業員数のカウントの方法
一般的に「従業員数」というと、その企業に雇用される正規従業員をはじめ、パート・アルバイトなどすべての労働者をカウントします。しかしながら、社会保険の適用要件を判断する従業員数をカウントする場合には、その会社の常時使用する労働者数ではなく「社会保険の被保険者数」で判断します。社会保険の適用対象にならない短時間労働者はカウントされません。
また、事業場ごとにカウントするのではなく、同一の法人番号である法人ごとの被保険者数で判断することになります。
- 従業員数の判断のタイミング
従業員数の変動が多い会社などは、どの時点での従業員数をカウントすればよいのか、悩むところです。月ごとに従業員数の増減がある場合については、「直近12か月のうち6か月で基準を上回った段階」で適用対象となります。
ここで注意したいのは、適用対象となった後に、従業員数が適用従業員規模を下回っても、原則として、引き続き適用されるということです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
事業主の皆様は、一度ご自身の企業が適用拡大の対象となるかご確認いただき、もし対象だった場合は対象従業員の「洗い出し」や「意向確認」、「保険料の算出」等を行わなければいけません。
短時間労働者を多く雇われていた企業などで、多くの従業員が適用拡大の対象となった場合、膨大な人数の手続きが発生する可能性があります。
もしこのような手続きをアウトソーシングしたい、今回の適用拡大に関することや、被扶養者の要件について相談したい、など労務手続き・管理についてお困りの方は社労士が複数在籍している札幌・東京の社会保険労務士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問い合わせください。
- ■前の記事へ
- 【令和5年3月】社会保険料率 改定について
- ■次の記事へ
- 【知っておきたい】マイナンバー法とは?