【判例から見る】競業避止義務とは?~フォセコ事件~
社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
みなさんは、「競業避止義務」という言葉を知っていますか?
競業避止義務とは、労働者が所属する(またはしていた)企業と競合に値する企業や組織に属したり、自ら会社を設立したりといった行為を禁ずる義務のことです。
例えば、秘伝のレシピを知ったラーメン屋の従業員が近くでラーメン屋を独立開業させたり、介護職員が利用者をごっそりと引き抜いて違う介護施設に転職したり、、、
会社としてはたまったものではないですよね。
しかし、会社として、自社のノウハウや機密漏洩は避けたい気持ちがあるのは当然ですが、従業員の行動を取り締まることは、職業選択の自由を奪うことにもなってしまいます。
このように従業員と会社の中で競業避止義務の有効性について裁判によって争われることは多々あります。
今回は実際の判例フォセコ事件(S45.10.23奈良地裁)をご紹介します。
競業避止義務はどのような点が争点となるのかしっかりと押さえていきましょう。
【目次】
◆フォセコ事件(S45.10.23奈良地裁)概要
◆判旨
◆まとめ
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◆フォセコ事件(S45.10.23奈良地裁)概要
金属の鋳造に関して使用する種々の化学物質の製造販売を業とするX社にY1及びY2は、過去10年余にわたって研究部門に勤務しており、それぞれX社の重要秘密技術に関与。
Y1及びY2は、「雇用契約存続中、終了後を問わず、業務上知りえた秘密を他に漏洩しないこと」「雇用契約終了後満2年間X社と競業関係にある一切の企業に直接にも、間接にも関係しないこと」という契約を締結し、機密保持手当も支給されていました。
しかし、Y1及びY2は相次いでX社を退職し、X社と同業のA社が設立されると同時に、同社の取締役に就任。A社の製品は全てX社の製品と競合し、X社の得意先に対してX社と同様の営業品目の製造販売しました。
X社は、Y1及びY2に対して、A社の事業はX社に在職している間に業務上知りえた技術的秘密に基づいていることは明らかであるとして、Y1及びY2の行為の差止めを求めて提訴しました。
◆判旨
○その会社だけが持つ特殊な知識は営業上の秘密として保護されるべき法益であり、これを知り得る立場にある者に秘密保持義務を負わせ、退職後一定期間競業避止義務を負わせる特約は適法・有効である。
○しかし競業の制限が合理的範囲を超え、Xらの職業選択の自由等を不当に拘束し、同人の生存を脅かす場合には、その範囲は公序良俗に反し無効となる。
○合理的範囲を確定するに当たっては、制限の期間、場所的範囲、制限の対象となる職種の範囲、代償の有無等について、会社の利益労働者の不利益及び社会的利害の三つの視点に立って慎重に検討していくことを要する。
今回は…
- ・競業避止義務を負う期間が2年間という比較的短期間であること、
- ・対象職種も比較的狭い
- ・場所は制限されておらず、退職後の制限に対する保障はないものの現職当時には機密保持手当が支給されていたこと
→以上の事情を総合すると、その義務は合理的範囲を超えているとはいえない
→秘密保持契約・競業避止契約がいずれも有効
◆まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介したフォセコ事件は競業避止特約の有効性判断に関する先駆的事例です。
今のうちから競業避止義務についてしっかりと規定しておきたい、どのレベルまで制限することができるのか知りたい、と感じた事業主様は、まずはお気軽に社会保険労務士法人Aimパートナーズまでお問合せください!
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