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精神疾患による労災認定判例③~名古屋高裁令和3年4月28日判決~

   

社会保険労務士法人Aimパートナーズです! 

 

前回紹介した品川労基署長事件(東京地判令元・8・19)では、

国が勝訴した理由の一つにパワハラ行為が、

精神疾患発症から1年半も前だったことがありました。

 

しかし、今回は事故の2年後に発病した精神障害が、労災と認定された裁判例を紹介します。

 

それではいってみましょう!

 

【目次】

◆名古屋高裁令和3年4月28日判決 概要

◆判旨

◆まとめ

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◆名古屋高裁令和3年4月28日判決 概要

 

 Xは、自動車部品の製造会社において、成形機等のオペレーター業務に従事していたが、2012年10月に工場内の取出機のチャック板と成型機の間に左顔面を挟まれ、左眼球破裂等の負傷。

 

 Xは当該負傷により2014年5月までは休業が必要な、また、同年6月以降は通院日について休業が必要な状態と判断された。なお、当該負傷については、2016年2月に左眼失明の状態で症状固定となった。

 

 Xは当該負傷前からアルコール依存症及びうつ病について継続的に精神科を受診していたが、2014年 10月に、当該負傷による左眼失明に基づく心因反応(神経症性うつ病)との診断を受け、労災請求したものの精神障害の発病と業務との間に相当因果関係が認められないとして、不支給決定がなされた。

 

◆判旨

 

 〇控訴人が平成26年10月29日時点で発病した精神障害は、適応障害であったと認めるのが相当である。

 

 〇そして、上記発病の主要な原因は、

①本件事故前後を通じて通院治療中であったアルコール依存症及びうつ病

②本件事故による心理的負荷

③左眼の負傷による心理的負荷

④右眼の視力の低下による心理的負荷

⑤労災保険法に基づく休業補償給付が打ち切られたことによる経済生活上の不安等の複合であったと認められる。

 

 〇本件事故による左眼の当初の傷病の発生自体は精神障害発症の6か月より前であるが、左眼の症状が精神障害発症当時も悪化を続けて苦痛を生じている場合も、除外するのは相当でない。

 

 〇視力の低下が本件事故から約2年後の発病当時も継続していた状況にあったことも総合的に評価すれば、右眼の視力の低下による心理的負荷を除いたとしても、本件事故と適応障害の発病との間の相当因果関係を認めるに足りる程度の強度なものであったと判断される。

 

 〇事故前からの既往症であるうつ病及びアルコール依存症は、本件事故時点では、就労に支障がない程度の状態で安定し、ほぼ寛解状態にあったから、業務以外の心理的負荷及び個体側の要因により適応障害を発病したもの(認定基準の認定要件における除外事由)があると認めることはできない。

 

よって不支給決定は取消となる。

 

◆まとめ

 

いかがでしたでしょうか。

 

認定要件②には「発病前約6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること」とありますが、本判決のようにケースバイケースで6か月以上前の心理的負荷だったとしても状況によっては認められる可能性があることがわかりましたね。

 

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