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定年制とそのトラブル事例

      2023/05/01

 

 

 皆様の会社の定年は何歳に設定されていますか?

 

 労働者にとって、定年は人生において大きな節目です。

 

 しかし、近年では「生涯現役」という考えや定年延長、再雇用が広がり、「65歳定年制」や「70歳定年制」といった話も広がってきました。

 事業主として、何歳に設定するのが最適なのかは職種や仕事内容によっても変わってきます。

 

 今一度、定年制に関する現時点の法律を理解したうえで、定年に関する会社の方針を見直していきましょう。

 

                                         

 

高年齢雇用安定法~義務と努力義務~

                                         

 

義務

 

〇60歳未満の定年禁止(高年齢雇用安定法第8条)

事業主が定年を定める場合は必ず60歳以上としなければならない。

 

〇65歳までの雇用確保措置(高年齢者雇用安定法第9条)

定年を65歳未満に定めている事業主は、以下のいずれかの措置が必要。

① 65歳までの定年引き上げ

② 定年制の廃止

③ 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

※適用者は原則「希望者全員」

 

努力義務

 

① 70歳までの定年引き上げ

② 定年制の廃止

③ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

⑤ 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

a.事業主が自ら実施する社会貢献事業

b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

 

                                                              

 

早期退職制度

                                                             

 

以上、現時点での定年に関する義務、努力義務をご紹介しましたが、もっと早い年齢で退職されている方を見たことはありませんか?

 

そのような方はおそらく「定年制」ではなく「早期退職制度」を導入している企業で働かれている可能性が高いです。

 

「早期退職制度」とは福利厚生の一環として定年に達する前に退職する労働者を募集して、退職金を多めに支払ったり、通常よりも多い有給休暇を付与したりする優待措置を設ける制度です。

 

強要ではなく、あくまで希望制であるため、早期退職制度があったとしても定年までその会社で勤められるところがポイントです。

 

会社側のメリットとして、「人件費が削減できる」「組織の若返りを実現できる」などがあげられます。

 

                                                              

 

定年・再雇用 よくあるトラブル事例

                                                             

 

定年制やその後の再雇用についてはトラブルが多く起こります。

 

【学校法人尚美学園事件(東京地判平28・11・30)】

 

65歳で定年退職した大学教授が、70歳までの再雇用を求めた。東京地裁は、65歳以降再雇用義務はないが、定年時にも有期契約の更新に関する雇止め法理を類推適用。

 

 「雇止め法理」

客観的に合理的な理由

・臨時性のある職務で有期労働契約を締結したこと

・通常の解雇同様の合理的な理由があること

を持たない以下の条件を持つ労働者

・無期労働契約と同視できると判断できる労働者

・更新されるものと期待する合理的な理由を持っている労働者

については有期契約期間が満了したからといって使用者側から一方的に契約を終了した場合、雇止め無効となる。

 

理事は「70歳までOK。賃金は7割」と説明しており、約15年間で7人いた希望者全員が70歳まで更新の実績があったことから雇用継続の期待は合理的とした。定年後も再雇用されたのと同様の雇用関係が存続するとしている。

 

 

 【北港観光バス(雇止め)事件(大阪地判平25・1・18)】

 

 体力低下や持病により68歳で雇止めされたバス運転手が、地位確認などを請求。大阪地裁は体力や健康に問題がない限り70歳程度まで継続する運用がなされていたと判示。雇用継続に対する期待を抱くことは客観的にみて合理的とされた。

 

また、会社は事故を恐れ、高齢者を減らす方針を決めたが、68歳で線引きした説明はなく、医師の診察を受けさせていないなど体力、健康状態の面で業務に耐えられない状況にあったとは認められないから、本件雇止めの合理的理由とはなり得ないとして請求を一部認めた。

 

【大阪経済法律学園事件(大阪地判平25・2・15)】

 

定年を70歳から67歳に引き下げる就業規則の変更を無効として、大学教授らが地位確認などを求めた。大阪地裁は高齢に偏った教員の年齢構成を是正する必要性は認めたが、定年を段階的に引き下げたり、割増退職金を支払う代償措置等を十分尽くさず、合理性を有さないと判示。67歳以降の再雇用制度は不利益の緩和措置とはいえないとした。

 

不利益な変更を行う条件

・ 労働者の受ける不利益の程度

 ・ 労働条件の変更の必要性

・ 変更後の就業規則の内容の相当性

・労働組合等との交渉の状況

 

                                                              

 

まとめ

                                                             

 

 いかがでしたでしょうか?

 

 「人生100年時代」という言葉も生まれている今、定年の年齢については人手不足の観点からも引き上げられることが予想されます。

 

しかし、会社にとって高齢者と呼ばれる人々を雇うことはリスクも伴うことは間違いありません。

 

再雇用期間中の業務内容を工夫し、若手が積極的に活躍できる会社づくりをしていくことが必要となってくるかと思います。

 

定年制や定年後の再雇用についてお悩みの方、定年制を含めた就業規則の改訂や作成をお考えの方は社労士が複数在籍している札幌・東京の社会保険労務士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問い合わせください。

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