【判例】配置転換の有効性②~ネスレ日本事件~
社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
前回の記事では「配置転換の有効性」について「東亜ペイント事件」をご紹介しました。
この最高裁判決により、会社からの配転命令については、権利濫用となるポイントとして以下の3つが上げられました。
1.業務上の必要性がない場合
2.業務上の必要性があっても他の不法な動機や目的があって行われた場合
3.従業員に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合
今回は、上記のポイントに当てはまってしまった判決、つまり配転命令が無効となった事例についてご紹介します。
【目次】
◆ネスレ日本事件 (H18.04.14大阪高判) 概要
◆判旨
◆まとめ
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◆ネスレ日本事件 (H18.04.14大阪高判) 概要
Y社の姫路工場において勤務していたXらは、所属部門の霞ヶ浦工場への移転に伴い、転勤を命じられました。
これに対しXらは、同居親族が要介護者であったことから、配転命令を拒否。
一審判決は、著しい不利益を理由に配転命令権の濫用ありとして、本件配転命令を無効としたため、Yはこれを不服として控訴しました。
◆判旨
冒頭紹介した、配転命令が権利濫用となりうるポイント3つのうち、今回は3.従業員に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合にあたるかどうかが主に争われました。
判決では、
〇要介護者が老齢であり転居がかなり困難であること、主治医が変更になるなどから症状悪化に結びつくこと可能性があること
〇姫路工場内の他の部署への配転などを検討していないなど、育児介護休業法26条において、同条の求める「配慮」がつくされていないこと
育児介護休業法26条=「事業主は、就業の場所の変更を伴う配置転換をしようとする場合において、転換により子の養育又は家族の介護を行うことが困難となる労働者がいるときは、配慮しなければならない」
上記の理由によって、YはXらに通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせ、配置転換命令権の濫用に当たるとし、大阪高裁も控訴を棄却。
よって労働者側の勝訴となりました。
◆まとめ
いかがでしたでしょうか。
従前の裁判例では幼い子供や老齢 の父母がいるというだけでは甘受すべき範囲内とされていた事例が多かったものの、平成13年の改正で育児介護休業法が新設されて以降、近年ではこのような事情に対する「配慮」がかなり重要になってきていると言えるでしょう。
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