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精神疾患による労災認定判例①~トヨタ自動車事件~

      2024/05/13

 

 

社会保険労務士法人Aimパートナーズです! 

 

前回のブログでは精神疾患による労災の認定要件をご紹介しました。

◆認定要件① 対象疾病に該当する精神障害を発病していること

◆認定要件② 発病前約6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

◆認定要件③ 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により発病したとは認められないこと

 

 

【前回ブログ】

精神疾患による労災認定

 

 

精神疾患による労災は、疾病の程度や災害の状況などの違いがケースによって幅広いため、その可否を判断することは容易ではありません。

 

今回は、遺族と労基による実際の判例をご紹介します。

それではいってみましょう!

 

 

 

 

【目次】

◆トヨタ自動車(豊田労基署長)事件 (名古屋高裁2024・9・16判決)概要

◆判旨

◆まとめ

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◆トヨタ自動車(豊田労基署長)事件 (名古屋高裁2024・9・16判決)概要

 

自動車会社Aの車両設計課係長として勤務していたB(当時三五歳)が、従前から恒常的な時間外労働や残業規制による過密労働により疲労が蓄積していたうえに、二車種の改良設計の期限が重なったことでさらに業務が加重。その他、組合の職場委員長への就任、開発プロジェクトの作業日程調整、南アフリカ共和国への出張命令等によって強い心身的負担を受けていたところ、飛降り自殺により死亡した。

 

Bの妻Xが豊田労基署長Yに対し、Bの自殺は業務に起因するうつ病によるものであるとして労災保険法に基づく遺族補償年金及び葬祭料の支給請求を行ったところ、Yにより不支給処分とされたことから、取消を請求。

 

一審の名古屋地裁ではBの訴えを退けたため、Bは高等裁判所に控訴した。

 

◆判旨

 

 〇当該業務と精神疾患の発症との間に相当因果関係が肯定されるためには、単に業務が他の原因と共働原因となって精神疾患を発症させたと認められるだけでは足りず、当該業務自体に、社会通念上、当該精神疾患を発症させる一定程度以上の危険性が存することが必要であると解するのが相当である。

 

 〇Bにはこれまでの生活史を通じて社会適応状況に特別の問題はなく、うつ病親和的な性格ではあったが、正常人の通常の範囲を逸脱しているものではなく、模範的で優秀な技術者であったのであるから、Bの性格傾向は、同種労働者の性格傾向の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでなかったと認められる。

 

〇労災保険法12条の2の2第1項は、労働者の故意による事故を労災保険の給付の対象から除外しているが、自殺行為のように外形的に労働者の意思的行為と見られる行為によって事故が発生した場合、その行為が業務に起因して発生したうつ病の症状として発現したと認められる場合には、労働者の自由な意思に基づく行為とはいえないから、同規定にいう故意には該当しない。

 

〇本件においては、業務外の要因による心身的負荷はさほど強度のものとは認められず、Bの本件うつ病は、上記の加重、過密な業務及び職場委員長への就任内定による心身的負荷とBのうつ病親和的な性格傾向が相乗的に影響し合って発症したものであり、さらにその後の開発プロジェクトの作業日程調整及び本件出張命令が本件うつ病を急激に悪化させ、Bは、本件うつ病による希死念慮の下に発作的に自殺したものと認めるのが相当である。

 

〇要するに、上記の加重、過密な業務等による心身的負荷は、少なくともBにとっては、社会通念上、うつ病を発症させる一定程度以上の危険性を有するものであったと認められるから、業務と本件うつ病の発症との間には相当因果関係を肯定することができる。

 

〇そして、本件自殺は、本件うつ病の症状として発現したものであるから、労災保険法12条の2の2第1項の「故意」には該当しないものである。

 

◆まとめ

 

いかがでしたでしょうか。

 

実は今回、Bの発症前後の残業時間は5時間~50時間ほどにとどまっており、過労死ラインに達するような働き方をしていたわけではありません。パワハラと訴えていた上司の言動にも人格否定や執拗さはなかったとされ、「心理的負荷が精神障害を発病させる程度の強度とは言えず、うつ病と業務に因果関係は認められない」と地裁では判断されました。

 

しかし高裁では、リーマンショックの影響で、従業員に原則として残業させないことを各部署に要請していたこと、勤務時間が限られているのに業務量が減っていなかったことにより業務の過密・過重性を認定、自死との因果関係を認めたかたちになりました。

 

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