【判例】就業規則による不利益変更②
社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
就業規則による不利益変更について、前回ご紹介した「第四銀行事件」では以下のポイントが総合考慮され、不利益変更に対し「合理性がある」と判断されました。
- ①就業規則の変更によって従業員が被る不利益の程度
- ②変更の必要性の内容や程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性
- ③代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況
- ④労働組合等従業員との交渉の経緯
- ⑤同種事項に関する我が国社会における一般的状況
今回は「合理性が認められなかった」、つまり就業規則の変更を無効とされた「みちのく銀行事件」についてご紹介していきます。
【目次】
◆みちのく銀行事件(平成12年 最高裁第一小法廷判決)概要
◆判旨
◆まとめ
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◆みちのく銀行事件(平成12年 最高裁第一小法廷判決)概要
賃金制度の見直しに伴い、2度にわたる就業規則の変更を実施。
1度目の変更では、「専任職」という職階を導入し、55歳に達した管理職は原則として専任職に移り、基本給を55歳到達直前の額で凍結。
2度目の変更では専任職手当を廃止して、賞与や業績給の大幅減額をもたらす旨の就業規則変更を行った。
結果として55歳以上の行員の賃金は大幅な削減となったため、就業規則の変更の効力は及ばないと主張して、専任職の辞令の無効、及び、従来の賃金との差額の支払いを求めて、提訴。
◆判旨
前回同様かなりの不利益変更ではありますが、今回は変更が認められず。
第四銀行事件までの最高裁判決を引用し、判断が行われました。
①就業規則の変更によって従業員が被る不利益の程度
⇒ 55歳以上の行員の賃金は、33%ないし56%の削減
⇒ ×
②変更の必要性の内容や程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性
⇒ 全国の地方銀行と比べても経営状況は低迷していたこと、金融機関間の競争が進展しつつあったことより、経営上高度の必要性があった
⇒ 〇
③代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況
⇒ 高年層の行員に対しては、大きな不利益のみを与えるものであり、救済ないし緩和措置の効果が不十分であった
⇒ ×
- ④労働組合等従業員との交渉の経緯
⇒ 従業員の73%が加入する労働組合の同意は得ていたが、少数組合の同意を得ないまま実施
⇒ ×
- ⑤同種事項に関する我が国社会における一般的状況
⇒ 他の地方銀行と比べて55歳以上の従業員の割合が大きく、その賃金水準も高くなっていた
⇒ 〇
不利益を被る行員への緩和・経過措置を設けるなど、適切な救済が行われていなかった事が主な要因となり、就業規則変更は「無効」となりました。
◆まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回の判例より、不利益変更を行う場合、不利益の程度にもよるものの、影響を受ける従業員へのケアは必須であると言えます。
では実際どの程度のケアが必要なのか?など、実際に就業規則の変更についてお困りの事業主様はお気軽に社会保険労務士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問合せください!
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