【提出必須!】36協定とは
2023/06/08
とある最近のニュースをご紹介します。
【令和5年5月8日送検】愛媛・八幡浜労働基準監督署
愛媛・八幡浜労働基準監督署は、外国人技能実習生10人に違法な時間外・休日労働を行わせたとして、とある会社とその取締役を、労働基準法第32条(労働時間)違反の疑いで松山地検に書類送検しました。
この会社で届け出されていた36協定は、締結当事者となる労働者の過半数代表者の選出が適法でなく、無効とされるものでした。
同労基署によると、労働者の過半数代表者は選挙などの方法で選出されたものではなく、「使用者の意向に沿う形で選出されていた」とのことです。
同社は有効な36協定がない状態で、令和4年1月1日~6月30日の期間に、週40時間を超えて1週当たり最大36時間、1カ月で最大156時間50分の時間外労働を行わせた疑い、また、1日8時間を超えて1日当たり最大4時間40分の時間外労働を行わせていたとみられています。
また、労働基準法35条では毎週少なくとも1日の休日を与えることが定められていますが、同社は1人につき最大10週間にわたり休日を与えなかった疑いも持たれています。時間外・休日労働に対し、法定の割増率以上の割増賃金も支払わなかったとして、労働基準法37条(割増賃金)違反でも立件されました。
今回の事例について
いかがでしたでしょうか?
読んでわかるとおり、この事例、外国人技能実習生にとにかく残業させ、法令で定められた賃金も支払っていなかったというかなり悪質な事例でしたが、今回注目して頂きたいのは以下の内容です。
『 この会社で届け出されていた36協定は、締結当事者となる労働者の過半数代表者の選出が適法でなく、無効とされるものでした。 』
実は36協定には、手続き方法に決まりがあります。
せっかく提出しても正しく手順を踏まないと、無効なものと判断され、法令違反となってしまうのです。
今回は皆さんの会社が法令違反とならないように、36協定の手順についてしっかりと解説していきます。
そもそも36協定とは?
労働基準法では、従業員を1日8時間・週40時間の労働時間を超えて働かせてはならないとしています。
これに違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があるため、企業は従業員に対してこの労働時間を超える労働を科さないように注意しなくてはいけません。
ただし、例外的にこれらの時間外労働を許容している場合があります。
この例外のひとつが、職場における労働者過半数を代表する労働者等との間で書面にて協定を締結し、管轄の労働基準監督署に届出、その届出を労働者に周知している場合です。
これが「36(サブロク)協定」と呼ばれるもので、労働基準法36条に規定されているため、このような呼称をもっています。
36協定を締結することで、法律で禁じられている時間外労働や休日労働を従業員に科しても、労働基準法の罰則が適用されることがないという免罰的効果が発生することになるため、初めて労働者に対し時間外労働・休日労働が認められるのです。
だからといって無限に残業させることができるわけではありません。
一般的には1か月45時間、年間で360時間が(※1年単位の変形労働時間制の場合、1か月42時間、年間で320時間)が上限です。
しかし、突発的な事情などに備えるための「特別条項」というルールを設ければ、以下の上限までの時間外労働・休日労働が可能となります。
・ 時間外労働が年720時間以内
・ 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・ 時間外労働と休日労働の合計について、「2か⽉平均」「3か⽉平均」「4か⽉平 均」「5か⽉平均」「6か⽉平均」が全て1⽉当たり80時間以内
・ 時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは、年6か月が限度
36協定 気を付けたいポイント
〇労働組合の代表または労働者の過半数代表の選出
36協定は労働組合の代表または労働者の過半数代表と企業側で締結するものなので、代表の
選出が必要になります。
冒頭で紹介した事例のように「使用者の意向に沿う形で選出されていた」とされてしまうと、36協定無効となってしまうので、注意が必要です。
具体的には、投票・挙手・回覧など支持の有無が明確にわかる民主的なもので行う選出方法が良いでしょう。
また、労働者の代表なので管理監督者は無効となります。
〇届出なしの時間外労働
36協定の効力を発揮できるのは、届出が正式に受理され、労働者に周知した日からとなります。
1年間の期限管理をすっかり忘れてしまっていたり、手続に手間取るなどして労基への提出が遅れてしまうと、 受理される以前に、時間外労働や休日労働は違反と見なされてしまうため、注意が必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
たとえ1分でも残業するのであれば提出しなければいけない36協定。
労働者のいる会社であれば、ほぼすべての会社は提出義務があると言ってよいでしょう。
もし事務手続きに割く時間がない、様式を見てもよく意味が分からないなど36協定についてお困りの方がいらっしゃれば、社労士が複数在籍している札幌・東京の社会保険労務士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問い合わせください。
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