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【注意】事業場外みなしの適用

      2023/06/23

 

 

 「事業場外みなし」とは外回り等で労働時間の管理が難しい労働者に対し、使用者はその労働時間に係る算定義務が免除され、一定時間労働したものとみなすことができる労働時間制度のことを指します。

 

 皆様の会社での導入状況はいかがでしょうか。

 

 昨今の裁判事例より、安易な「事業場外みなし」は否認されてしまうケースが多発しています。

 

 もし、適用中の従業員がいる企業は、「事業場外みなし」が適用できる要件がそろっているかを確認すると同時に、もし当てはまっていない場合は通常の労働時間管理への切替えも検討が必要です。

 

 今回は「事業場外みなし」の適用が難しいとされた代表的な判例、また適用するための要件をご紹介します。

                                                              

 

阪急トラベルサポート事件(最二小判平26・1・24)

                                                             

 

 【事件の概要】

 

 派遣会社(Y社)に雇用された従業員(X)が、派遣先となる旅行会社(A社)で添乗員として、ツアーの添乗業務に従事していました。

 

 Y社では、添乗業務については、労働基準法第38条の2第1項「事業場外のみなし労働時間制」を適用。所定労働時間勤務をしたものとして取り扱っていました。

 

 これに対して、Xが、ツアーの添乗業務は「労働時間を算定し難いとき」には当たらないため、事業場外のみなし労働時間制は適用されないと主張し、時間外勤務手当等の支払を求めてY社を提訴しました。

 

 【判決】

 

 本件の添乗業務は、ツアーの旅行日程に従って、ツアー参加者に対する案内や必要な手続の代行といったサービスを提供するものでした。

 

 〇添乗業務は、旅行日程により、あらかじめ業務内容が具体的に確定していて、Xが自ら決定できる事項の範囲及び決定できる選択の幅は限られていた。

 

 〇ツアーの実施中も、Y社はXに対して、携帯電話を所持して常時電源を入れておき、旅行日程の変更が必要となる場合はA社に報告して指示を受けるよう求めている。

 

 〇ツアーの終了後に、A社はXに対して、添乗日報により、業務の遂行状況の詳細で正確な報告をさせている。

 

 以上のような業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、旅行会社と添乗員との間の業務に関する指示及び報告の方法、内容やその実施の態様、状況等を考慮すると、Xの勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難く、労働基準法第38条の2第1項の「労働時間を算定し難いとき」には該当しないと判断され、Y社に対して割増賃金の支払いが命じられました。

 

                                                              

 

「事業場外みなし」導入のポイント

                                                             

 

 阪急トラベルサポート事件は「事業場外みなし」という制度においてとても重要な最高裁判例です。

 

 みなし労働制を適用することを通例としていた旅行業界では、この判例で業界に激震が走ったことはいうまでもありません。

 

 本判例でも出てきたとおり事業場外みなしの適用で最も重要なのは「労働時間を算定し難いとき」に当てはまるのかどうか。

 

 この「労働時間を算定し難いとき」について、厚生労働省のガイドラインでは「事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な業務」としています。

 

 ただし、以下の場合には労働時間の算定が可能であると判断される旨の明記があります。

 

 〇何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合

 〇無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合

 〇事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合

 

 昨今の情報通信技術が進化している現状をみると、たとえ事業場外で仕事をしていたとしても、労働者自身が労働時間を管理することや、使用者の指揮命令を受けることについては問題なく対応できてしまう環境が整っているものと考えられます。

 

 外に出ている労働者とは携帯電話で容易に連絡がとれますし、モバイル端末によるインターネット利用、クラウドによる勤怠管理も今では当たり前です。

 

 判例ではこのあたりのIT事情が考慮され、事業場外みなし適用の正当性が検討される際の「労働時間の算定が困難である」という要件についての判断が非常に厳しいものとなっています。

 

引用(厚生労働省/「事業場外労働に関するみなし労働時間制」の適切な運用のために)

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/jikanka/jigyougairoudou.pdf

                                                              

 

まとめ

                                                             

 

 いかがでしたでしょうか?

 

 事業場外みなしを導入している企業には酷な言い方にはなってしまいますが、今の時代、事業場外みなしの適用の余地はほとんどないのではないかというのが正直なところです。

 

 直近でも2022年11月22日東京高裁判決によると外資系製薬会社で外勤の医療情報担当者(MR)として働いていた労働者が残業代などの支払いを求めていたもので、東京高裁は事業場外みなし労働時間制の適用を認めないとする判決を下しました。

 

 高裁判決の決め手となったのは、「勤怠システムの導入により、始業・終業時刻の把握が可能となったこと」。一審では「業務について労働者の裁量による部分が大きいこと」、さらに「上司の指示・決定を受けていなかったこと」が考慮されて事業場外みなしの適用を認める判決が出たものの、二審では勤怠システムを導入していたことを重視し「労働時間を算定し難いときに当たるとはいえない」とされ、一転して適用を認めないとしました。

 

 賃金債権の時効も3年に伸びた中、事業場外みなしの適用が認められなかった場合のリスクが増しているといえます。

 

 今回の記事で、「労働時間の算定が困難である」という状況といえるのか不安、通常の労働時間管理に切り替えたいと感じた方は、社労士が複数在籍している札幌・東京の社会保険労務士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問い合わせください。

 

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