残業代抑制に効果的な方法とは?
2023/04/26
とある最近のニュースをご紹介します。
【令和5年3月30日送検】大阪中央労働基準監督署
令和5年3月30日、大阪中央労働基準監督署は、とある会社に対し人事部員3人と営業部員1人が行った時間外労働のうち、会社に申告しなかった時間について、割増賃金を支払わなかったとして、労働基準法第37条(割増賃金)違反などの疑いで大阪地検に書類送検しました。
自己申告制により労働時間を把握していた会社だったため、会社側の主張としては当然、「申告してこなかった分については、残業時間が分からないから払いようがない」というのが本音でしょう。
しかし、従業員が会社に申告しなかった背景として、会社が残業時間を一定の範囲に抑えるよう指示していたために、4人が超過分の申告を控えていたそうです。
深夜・早朝の時間外労働や休日労働も発生についても申告しておらず、労基署がパソコンのログやメールの送受信履歴といった客観的な記録から実際の労働時間を算出したところ、実際の時間外労働は最長月108時間に上りました。
よって、時間外労働の上限規制を上回る月100時間以上の時間外労働(休日労働含む)をさせたとして、同法第36条(時間外及び休日の労働)違反の疑いでも立件。
また、特別条項付き36協定で定めた月70時間を超えていたことから、会社を同法第32条(労働時間)違反の疑いでも送検。時間外労働が70時間を超えた時点から、法定の週40時間を超えて働かせた時間はすべて違法と判断しました。
今回の事例の解説
いかがでしたでしょうか?
おそらくこの会社では多額の残業代を抑制するため、残業時間を一定の範囲に抑えることを指示していたのだと予想できます。
従業員が指示通り本当に抑制できていれば問題はなかったものの、結果的にサービス残業しているようなかたちになると、どうしても会社が悪くなってしまうのです。
このことから会社は「残業時間を一定の範囲に抑えるよう指示」するだけでは労務管理として不十分であることが分かるかと思います。
残業時間の抑制はどんな会社も頭を悩ます問題です。実際にこの問題に対し、他の会社はどのような改善方法をとっているのでしょうか。
残業削減のための取り組み
他企業が行っている残業削減のための取り組みをご紹介します。
中小企業での導入は現実的ではないものもあるかもしれませんが、「現場での工夫」を行ったものは取り入れやすいものもありそうです。
〇某情報通信サービス企業
社員が朝のミーティング時間にその日の退社時間を宣言。
現在では、「アジャイル開発」という仕事の進め方を採用しており、個人の一週間の業務計画を所属チームが把握し、チーム内で声をかけあって早く帰る日や残業する日などを決めています。
〇某お菓子製造大手企業
トップが率先して社員に早い退社を促すほか、社内のインテリアもガラス張りにしたり、社員が座る席をある一定の時間ごとに変えたりしてあえて落ち着かない環境にしています。
〇某子育て支援NPO法人
業務の一部を外部のクラウドサービスなどに委託することにより、残業時間の削減に取り組んでいます。
〇某転職サービス大手企業
従業員の労働時間を集計して、他の従業員が見られるように掲示する取り組みが行われています。全体に掲示することでどれくらい居残りをさせられているかを自覚し、恥ずかしいという雰囲気を作り出しています。
〇某大手総合商社
深夜勤務を禁止、20時から22時までの勤務も原則禁止とし、勤務が必要になる場合は事前申請をすることとしています。代わりに朝5時から8時までの早朝勤務を推奨し、深夜勤務と同様の割り増し賃金を支給しています。
〇某Web制作企業
週に一度19時に強制的に消灯するという取り組みを行っています。
〇某ITコンサル企業
週一度の18時退社と月一度の有給休暇取得という二つのルールを設定しています。
〇某映像制作企業
21時以降の残業には1ヶ月に7枚使える残業チケットが必要になる制度を導入。従業員が残業チケットを使用する時にはシステム上で社長に申請し、使用理由を明確にする必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「現場での工夫」を促す方法と「会社の制度として業務時間の制限」を設ける方法がありましたね。会社によってどちらの方法が効果的かもバラバラです。
ご自身の会社に導入しやすそうなものから試されてはいかがでしょうか。
残業代を抑制したい、固定残業を設けたいなど、従業員の労働時間、またその賃金についてお悩みがある方は社労士が複数在籍している札幌・東京の社会保険労務士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問い合わせください。
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